出版社内容情報
50歳過ぎてのデビュー時に既に完成されていた“葉室史観”。敬慕され続ける作家を涵養した本、人との出会いが綴られたエッセイ集。
内容説明
「寺山は登場したときから、すでに完成していたのかもしれない」。寺山修司の愛読者・葉室麟も、五十歳を過ぎてデビューした時、すでに完成されていた。直木賞受賞前後から逝去までの間に発表した書評、随筆、小説講座、掌編等をふんだんに収録。人生の苦渋と他者への敬愛、そして読書が遅咲きの国民作家を完成させたと知る一冊。
目次
第1章 読書の森で寝転んで(わたしを時代小説家へと導いた本;『韃靼疾風録』司馬遼太郎 ほか)
第2章 歴史随想ほか(“西郷隆盛”とは誰だったのか;三英傑 ほか)
第3章 小説講座で語る(小説は虚構だけど、自分の中にある本当のことしか書けない。書くことは、心の歌をうたうことです。)
第4章 掌編、絶筆(芦刈;我に一片の心あり―西郷回天賦 ほか)
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞し作家デビュー。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月23日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
113
私はこの方の本は「蜩ノ記」しか読んだことがなく、2017年に66歳で逝去されていたとは知りませんでした。これから活躍というのにご本人は残念だったのでしょうね。自分なりの「坂の上の雲」をこれから書こうと思っていたのでしょうね。ここに掲載されていr読書録は私もほとんど読んでいて親近感を覚えました。そのほか歴史や日常に関するエッセイが収められています。読みやすい感じが非常にします。2022/08/22
tamami
54
2017年に亡くなった作家の遺著ともいうべきエッセイ集。新聞に定期的に掲載された書評と、歴史に関わる幾つかの随想作品、小説講座での語り、絶筆となった言葉が収められてある。書評は、どれも数頁の短いものであるが、作家自身の生活と読書体験、文学史的素養に裏付けられた、作品・著者の本質を衝く文章ではないかと思う。最後の一行まで作家の心遣いが感じられる。歴史随想の中では、藤原不比等についての一文が印象に残った。掌編ではあるが、それまでの自分の不比等像を一新させる視点を持っているように感じた。第三章は、「小説講座で語2022/08/02
はな
30
初読み作家さん。題がまず好き。読書好きとしてはとても惹かれるシュチエーション。紹介された本など最近遠のいていた時代小説、歴史小説が多く久しぶりにまた読みたいなと思いました。そして何より葉室麟さんの本を読みたいと思いました。病床で作品の構想をお話されていたとのこと。読んでみたかった。2024/01/14
マッピー
21
読もう読もうと思いながら、まだその作品を読んだことのない葉室麟のこの作品を買ったのは、もちろんタイトルに惹かれたから。『読書の森で寝ころんで』こんな至福はあるまい。50歳を過ぎてからの作家デビューで、残り時間にどれだけ書けるのかをいつも考えていらした著者の病床での最期の言葉に「西郷のあとは、坂の上の雲。がんばらないと。」とあって、その早すぎる死を残念に思う。葉室麟の麟は、勝麟太郎から取ったとあって、思わずにやり。絶対趣味合いそうだなあ。2022/11/20
みなみ
19
直木賞受賞から逝去までの書評や随筆等をまとめたもの。定年退職後、「仕事に終われているときには、気づかなかった人生の細部の美しさに目がいくようになっていた」という言葉や、禅宗での食事の作法として「喜びと感謝の気持ちで、もてなす(喜心)、親が子を思うように相手の立場を考え、親切を尽くす(老心)、大山や大海のようにとらわれや偏りを捨てる(大心)」を忘れてはならないとする考え方は心掛けたい。2024/09/07