出版社内容情報
夫を山へ行かせたくない妻が登山靴を隠した結末は。冒頭「山靴」からラスト表題作まで、切れ味よく人間の業を描く傑作ミステリー集。
内容説明
夫を山へ行かせたくない妻が登山靴を隠した。その恐ろしい結末とは(山靴)。少年をひき逃げしたあげく、自首もできずにうろたえる青年が自殺を思い立ち山に入る。そこで遭難した中学生に出会い、運命の歯車が回り始める(山が見ていた)。冒頭からラストまで、切れ味鋭く人間の業をえぐり出す、初期の傑作ミステリー15篇新装版。
著者等紹介
新田次郎[ニッタジロウ]
明治45(1912)年長野県生れ。本名藤原寛人。無線電信講習所(現・電気通信大学)卒業。昭和31(1956)年「強力伝」にて第34回直木賞受賞。41年永年勤続した気象庁を退職。49年「武田信玄」などの作品により第8回吉川英治文学賞受賞。55年2月心筋梗塞のため急逝(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
87
新田次郎と言えば私の中で山岳小説の第一人者というイメージがあるが本作は山と普通の生活、人生の中で起こるミステリを15編読ませてくれる。単行本の初出が昭和51年なので時代的にも今と比べるとそれも面白い。物語それぞれのラストのオチが何とも絶妙。新田さんのイヤミスもいいな。表題の「山が見ていた」はお得意な山を舞台にある男の悲喜劇。免許取りたての男が仕事中に男の子をひき逃げする。自首できなくて山で死のうと登山に。そこで出会う迷子になった5人の少年少女たち。男が取った行動とは…。人の運命なんて一寸先は分からない。2022/01/08
じいじ
84
3作目の新田次郎は初期の短篇集、これで完全に捕まったようです。どれも粒揃いでおもしろいです。本格的なミステリーではないが、それがかえって人間味とリアリティさを出して新鮮味を感じます。中でも【山靴】が気に入りました。婿入り円満夫婦が主人公。「山は恐ろしいところですから…!」と決めつける嫁とその母親。ついに、山好きの婿が我慢が出来ず、実母の後押しを得て「山行」の強行突破します。この夫婦の行く末は、離婚? ワクワク感が堪らない傑作です。2023/03/24
タツ フカガワ
53
陰で自分の俳句が稚拙だと笑われていたことを知った社長が社員に一矢報いる「十六歳の俳句」。4歳で放火の快感を覚えた男が、最後に妻に投げかけられる言葉に思わず苦笑の「危険な実験」。名うての保険外交員の手練手管vs保険会社は詐欺師と言い放つ作家の皮肉な結末が面白い「死亡勧誘員」など、文庫350ページに15編。山岳小説や時代小説とはまた違ったブラックな味わいの新田作品で、古い作品ながら面白く読みました。2023/10/12
Shoji
45
非常に面白かった。15篇のミステリーが収録されています。表題作が何といっても抜群に面白かった。会社員が免許をとった翌日に営業車両で子どもを撥ねるところからお話は始まります。二転三転します。この先どうなるんだろう、早く読みたくて心が急きました。他の作品も良かったです。堪能しました。2022/01/02
金吾
35
題名から山岳小説だと思ったら違いました。人間の闇を感じる話が多かったです。「山靴」「16歳の俳句」「おしゃべり窓」「山が見ていた」が面白かったです。2025/04/07