出版社内容情報
事故をきっかけに左手に亡き兄・海斗が宿った高校生の岳士。兄の存在を消す治療を拒否し東京に逃げる道中で殺人事件に巻き込まれる。
内容説明
高校生の岳士は、ある事故がきっかけで左手に死んだ兄・海斗の人格が宿るようになった。精神科の治療を拒否して家出した“ふたり”は殺人事件に巻き込まれ、容疑者として追われるはめに。「濡れ衣を晴らすには真犯人を見つけるしかない」。海斗の助言を受けて、岳士は危険なドラッグ“サファイヤ”の密売組織に潜入する!
著者等紹介
知念実希人[チネンミキト]
1978年、沖縄県生まれ。東京慈恵会医科大学卒。日本内科学会認定医。2011年、『レゾンデートル』で第4回島田荘司選ばらのまち福山ミステリー文学新人賞を受賞。14年刊の『天久鷹央の推理カルテ』に始まる「天久鷹央」シリーズが人気を博し、15年に『仮面病棟』が啓文堂書店文庫大賞を受賞しベストセラーとなる。『崩れる脳を抱きしめて』『ひとつむぎの手』『ムゲンのi』で、18年、19年、20年本屋大賞連続ノミネート(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
イアン
96
奇妙な兄弟の逃走劇を描いた知念実希人の長編。2年前のバイク事故以来、左手に死んだ双子の兄・海斗の意識が宿るようになった岳士。偶然死体を発見してしまったことにより殺人事件の容疑者として追われる身となるが…。謎めいた美女や怪しいドラッグの存在も相まって圧倒的に読ませるが、そもそもの発端となる「通報したら誤認逮捕されるので自力で真犯人を捜す」という行動原理が腑に落ちない。特殊設定モノであってもこの辺のリアリティは追求してほしいなと思う一方、このモヤモヤを氷解させてくれるようなラストに期待しつつ、下巻へ進みます。2022/01/03
ワレモコウ
52
双子の兄弟、岳士(弟)と海斗(兄)は、バイク事故にあい海斗が亡くなってしまう。なぜか岳士の左腕に海斗の意識が宿ってしまうが、海斗の意識を消されたくない岳士は、治療から逃げ出してしまう。野宿していた河川敷で死体を見つけてしまったことで、逃避行と犯人探しが始まる。途中から、かなりのハードボイルドになってきて、あり得ない展開が繰り広げられるが、サクサク読めた。下巻へ。2022/09/25
dr2006
44
交通事故で死んだ双子の兄海斗の人格が弟岳士の左手に宿り、会話ができるというかなりファンタジーな設定だが、ストーリーはハードボイルドだ。そんな左手の症状を理解してもらえない岳士は、精神科の治療を拒否し家を飛び出した。バイクで東京へ向かうさなか、運悪く殺人事件に居合わした岳士は警察に追われてしまう。岳士は無実を明かす為、左手に宿る兄海斗の助言を受けながら真犯人を探すのだが…。若い兄弟が徐々に真相に近づくのと引き換えに犯罪に手を染めてゆく姿が痛々しい。兄弟の会話はまるで善悪と欲望の鬩ぎ合いの葛藤の様だ。下巻へ。2025/09/24
キナコ
33
SF混じりのサスペンスミステリー。事故で死んだはずの双子の兄が左手に宿ってしまったという、驚きの設定。果たして兄は本人なのか、それとも弟の頭のなかで作られた存在なのか。曖昧なまま、まさかの殺人事件に巻き込まれていく。ドラッグの怖さが生々しく書かれており、さすが現役医師だなぁ。まだ高校生という、大人に成りきれていない子の家族と薬との葛藤が魅力的な作品。2024/03/23
yamatenodolphine
32
知念作品で病院が登場しない作品を読むのは初めてかも?左手に亡き双子の兄の魂が宿る(?)岳士が殺人事件の容疑者とされてしまい、逃亡しながら誤解を解くために左手に宿る兄・海斗とともに真犯人を追う上巻。頭脳派の海斗の指示に従い危険ドラッグの巣窟に乗り込んだりしますが、上巻では見事に木乃伊捕りが木乃伊に…な展開。ドラッグ中毒患者の描写は流石です。それにしても自分の左手に宿る海斗と話すとき、声を出さずに会話出来ないものなのだろうか?と思いながら読んでおりました(笑)どうやって容疑を晴らすのか、下巻が楽しみです。2023/01/05