出版社内容情報
失踪した父と同時に消えた自転車の行方を追う「ぼく」。台湾から戦時下の東南アジアへ、時空を超えて展開する壮大なスケールの物語。
内容説明
二十年前に失踪した父とともに消えた幸福印の自転車が戻ってきた。小説家の「ぼく」が自転車の来し方を探るうち、物語は時空を超えて広がっていく。中華商場での庶民生活、蝶の貼り絵に携わる女子工員、マレー半島を駆ける銀輪部隊、ビルマから台湾に渡ったゾウの記憶―。ブッカー国際賞候補作。
著者等紹介
呉明益[ウーミンイー]
1971年、台湾・台北生まれ。輔仁大学マスメディア学部卒業。国立中央大学中国文学部で博士号取得。国立東華大学中国文学部教授。97年、『本日公休』で作家デビューを果たす。18年には『自転車泥棒』でブッカー国際賞の候補となる
天野健太郎[アマノケンタロウ]
1971年、愛知県三河生まれ。京都府立大学文学部中文専攻卒業。2000年より国立台湾師範大学国語中心へ留学。帰国後、台湾専門の翻訳家・通訳となる。2018年11月逝去。俳人でもあった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sam
52
台湾人作家の小説は初めて。「父親の失踪とともに失われてしまった自転車の探訪」というシンプルな粗筋なのだが、奥行きや拡がりも感じられる不思議な魅力を持つ作品であった。自転車という「もの」に拘りつつ、想像力を拡げながら物語を紡いでいくところは村上春樹にも通じるものを感じた。帯の言(「緻密なディテールと、奔放なイマジネーションで描かれた、アジア文学の最前線」)が実に的確(自力で纏められず恥ずかしい限りですが)。台湾を巡る歴史をもう少し知っておけばより深く理解できたのかもしれない。著者の他の作品も読んでみよう。2021/09/19
Shun
34
台湾作家・呉明益による長編小説で、邦訳は「歩道橋の魔術師」に次いで2冊目となるそうだ。また2作ともに過去の記憶に現れる中華商場の場面など繋がりを感じられる部分があり、ここに拘りか作家が大切にしている記憶とも受け取れます。この商場にかつて暮らしていた”ぼく”は、長い時を経て戻ってきた自転車によって昔を思い出す。そしてこの自転車と共に昔失踪した父の思い出が蘇り、また自転車を巡って関わった人たちの記憶の旅を辿ってゆく長い歴史が広がっていきます。この感覚、なんとなく村上春樹を連想する作風で好みの作家になりました。2021/12/13
hukkey (ゆっけ)
24
失踪した父親と共に消えた自転車が20年越しに見つかり、どうやってここまで辿り着いたのか、それを探るうちに出会う人々の自転車との物語に触れながら、家族内の痼りを晴らしていく、台湾人作家が描く翻訳小説。かつて中華商場は下町のような雰囲気を想像し、太平洋戦争は壮絶なマレー作戦で血に塗れる自転車と死者が思い浮かぶ。ビルマの森で息絶えたゾウはどれほどの苦痛だっただろう。文章が丁寧で読みやすく、合間には自転車にかける手間と愛着も感じさせてくれる。ただ軽い話かと思って気付いたら、目の前に壮大な世界が広がっていた新感覚。2021/12/18
そふぃあ
23
人間が起こす戦争によって、動物園の生き物たちが人間の都合で殺される。とても悲しくなった。やりきれない。ウクライナとロシアの戦争で犠牲になる動物たちのことを想わずにはいられなかった。2023/08/30
秋 眉雄
21
作者である呉明益さんが物語を創り上げているというよりも、何だか登場人物達をただただ見つめているかのような、そんな小説だと感じました。そしてその眼差しは登場人物それぞれに対してまったく優劣の無い、公平な眼差しでした。読んでいるその最中にも、まるまる読み切らないうちからもう誰かに薦めたくなるような、そんな一冊です。2021/11/12
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