出版社内容情報
近づいたかと思えば遠ざかり、遠ざかると近づきたくなる。意識した瞬間にするりと逃げてしまうもの――傑作短篇集。
内容説明
わたしは魚籠透と、プラハ帰りの那谷紗を空港で迎えた。歴史ある建物が壊されてゆくキエフでの、月夜のコンサート。古い通りを歩き、町を見下ろす丘の上に登り、空に向けて提灯灯籠を縦に流す―。加速する時代の速度に飲み込まれるように、抗うように生まれた想像力が鮮烈なイメージを残す短篇集。
著者等紹介
多和田葉子[タワダヨウコ]
小説家、詩人。1960年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ハンブルク大学大学院修士課程修了。文学博士(チューリッヒ大学)。82年よりドイツに移住し、日本語とドイツ語で作品を手がける。91年『かかとを失くして』で群像新人文学賞、93年『犬婿入り』で芥川賞受賞。96年、ドイツ語での文学活動に対しシャミッソー文学賞を授与される。2000年『ヒナギクのお茶の場合』で泉鏡花文学賞を受賞。同年、ドイツの永住権を取得。11年『雪の練習生』で野間文芸賞、13年『雲をつかむ話』で読売文学賞、芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。16年、ドイツのクライスト賞を日本人で初めて受賞。そのほか18年『献灯使』で全米図書賞翻訳文学部門、20年朝日賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サンタマリア
33
難解。解説が解説してて助かったー。『胡蝶、カリフォルニアに舞う』の主人公が”I”の理由はなんとーく分かっててついていけた。『文通』はストーリーが凝っていて楽しく読めた。後は…。2023/04/20
大粒まろん
24
楽しく読みました。多和田さんは言葉遊びが好きだ。そしてちゃんと裏切ってくる。その裏切り方が厭じゃない。ま、そこが感想の分かれ目かな。私はやはりこの人とは相性が良いのだろう。どこが面白いと聞かれても、上手く答えられないけど笑。大体タイトルのセンスww アナグラムなの?内容もそうだし。パラレルワールド的な設定なのだけど、そこにもちゃんと一癖ある。彼女には根底に確固たる基盤があり、そこに綿密な破壊が構築されていて、それは法螺と嘘のような大きな違いがあると思う。とか言ってみる。と、それらしいかな笑。2024/06/21
びっぐすとん
19
110円本。リカちゃんで呆けた頭にはパンチが重い。相変わらずの多和田ワールド。理解とはほど遠いが感じるところはある。漢字の変換ちがいやわざとひらがな表記にする言葉への感覚の鋭さ、ユーモア。異世界でも平行世界でもない、私たちの世界のなかの歪んだ部分あるいは裏側。見えないものが見えるようになるまで感覚を研ぎ澄ませたら、多和田さんの世界を体感出来るのだろうか?2022/09/13
TSUBASA
18
ロシアを舞台に魚籠透(ビクトル)とわたしは那谷紗(ナターシャ)の住む地区で行われるささやかなイベントに参加する表題作ほか全7編の短編集。言葉遊びの中でどこか現代社会の輪郭を描き出してるような作品。言葉遊びに翻弄されるばかりで本質的なところを受け取れなかったのが正直なところ。日本で職を求めるもアメリカ生活のノリしか知らないIは後ろめたさや不安を感じる『胡蝶、カリフォルニアに舞う』、書籍に載せるポートレートが中々届かない中悶々とする『おと・どけ・もの』が良かったかな。2022/10/29
ゆみにてぃー。
16
大好きな多和田葉子さん。 正直に言って大ハズレかなぁ。 7つの物語がどれも突拍子もない幻覚ストーリーで今何が起きてて、どこから夢と現実なのか入り組みすぎてついていけず…。 これは作者が世の中に怒っている事や嘆いている事を揶揄していているのではないかと思いました…。 だとしたら凄く怒ってる(笑) 言葉遊びが好きな作家さんで、そこは問題なく、むしろいつもの方が言葉遊び凄まじいのに(笑)今回は言葉遊びが少ない代わりに、「薬でもやって幻覚出ちゃったのかな主人公は?」みたいな狂気を感じました。2021/09/01
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