出版社内容情報
明治維新で没落した家を再興すべく西南戦争へ参加した錬一郎。彼を待っていたのは、一癖も二癖もある厄介者ばかりの部隊だった。
内容説明
大阪で与力の跡取りとして生まれた志方錬一郎は、明治維新で家が没落し、商家へ奉公していた。時は明治10年、西南戦争が勃発。武功をたてれば仕官の道も開けると考えた錬一郎は、意気込んで戦へ参加することに。しかし、彼を待っていたのは、落ちこぼれの士族ばかりが集まる部隊だった―。松本清張賞受賞作。
著者等紹介
坂上泉[サカガミイズミ]
1990年兵庫県生まれ。東京大学文学部日本史学研究室で近代史を専攻。2019年「明治大阪へぼ侍 西南戦役遊撃壮兵実記」で第26回松本清張賞を受賞。20年同作を改題したデビュー作『へぼ侍』で第9回日本歴史時代作家協会賞新人賞を受賞。同年『インビジブル』で第164回直木賞候補となり、21年第23回大藪春彦賞と第74回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふじさん
89
松本清張賞受賞作。与力の跡取りの志方錬一郎は、明治維新で家が没落し、商家に奉公して10年、17歳の時に、西南戦争が勃発した。御維新の負け組の錬一郎は、武勲を挙げ一発逆転を狙って壮兵になる決心をする。配属になった分隊は、いずれも御維新の負け組で、一癖も二癖もある男たちばかりだった。主人公が西南戦争で人生の逆転を狙うところや、西郷札をめぐる陰謀が描かれるところ等、松本清張の「西郷札」を彷彿させるエピソードもあり、楽しく読むことが出来た。若々しいタッチで展開も速く、読みやすく新しい時代小説の可能性を感じた。 2022/11/07
えみ
64
目に見える勝利だけが勝利とはいえない。そう教えてくれたのは“へぼ侍”こと西南戦争を戦う、志方錬一郎だった。勝つということは誰かが負けるということ。勝者になることを望んで挑んだ西南戦争で彼は、勝つこと以上の価値を己の道に見出すことになる。武功とは一体何をもって決まるのか。決して優秀とは言えない部隊の分隊長となった志方が仲間と其々の特技を武器に敵に立ち向う、成長と戦の時代小説。終始繰り広げられる方言もいい味を出している。戦の泥臭さや不安感を方言によって和らげ、血生臭くなるような会話さえ柔らかくしてくれる一冊。2022/09/01
マツユキ
18
明治維新で没落した士族の子で、十七歳の錬一郎は、世話になっていた薬問屋に別れを告げ、西南戦争で官軍として戦うことになるが…。主人公を含めて4人の弱小部隊ですが、それぞれの特技を活かしての活躍が面白かったです。戦場の現実を知り、最初の目的を見失いながらも、出会った人々から学び、前に進んでいくのが、爽快。それだけでは終わりませんが、主人公は最初から最後まで心根が真っすぐで、素晴らしかったです。歴史上の有名人登場には、実際は?と興味が湧いてきました。舞台化されていますが、連続ドラマで見てみたい。2024/01/18
Book Lover Mr.Garakuta
14
【速読】おきな書房で、購読:明治時代に生きた青年の話、紆余曲折を受け、仕官の道を開こうとするが、艱難辛苦の道を歩むことに。2022/01/05
Kei.ma
11
志を立てる若者。その家族や縁者が期待と不安の混じった眼差しを向けるのと同じように、読者は主人公志方錬一郎17歳の一年間を見守った。商家奉公をやめて大阪鎮台に入るや否や軽妙洒脱な文章に拍車がかかる、面白い。青侍だった沢良木、大男松岡に勘定高い三木との掛け合い。たったこれだけでも社会は荒波と知れる。青二才といっても芯が通っている錬一郎。だから、若き犬養毅と共鳴しても驚かない。吉之助に会っても。そして、幾つになってもへぼ侍と自認することが素敵だ。こんな男が歩んだ道は、振り返ると虹と輝いているに違いない。2022/07/30