内容説明
1966年ひのえうまの同じ日に生まれた留津とルツ。パラレルワールドに生きるふたりの女性は、いたかもしれないもうひとりの「自分」。進学、就職、恋愛、結婚、出産…無数の分岐点に、騙し絵のようにかかわってくる同じ名を持つ恋人や友人。昏い森に迷い込み、道を見失い、惑い、選びながら進む先にあるものは。
著者等紹介
川上弘美[カワカミヒロミ]
1958(昭和33)年、東京都生まれ。お茶の水女子大学理学部卒業。94年、「神様」で第1回パスカル短篇文学新人賞を受賞。96年、「蛇を踏む」で第115回芥川賞を受賞。2001年、『センセイの鞄』で谷崎潤一郎賞、07年、『真鶴』で芸術選奨文部科学大臣賞、14年、『水声』で読売文学賞、16年、『大きな鳥にさらわれないよう』で泉鏡花文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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69
🌟🌟🌟🌟☆。(ややオマケ。🌟3.8くらい)(12月に文庫落ちしたモノを6月に¥110で購入。超掘り出しモノ。)ひとつだけSF要素を入れて一人の女性のほぼ一生を綴った物語。俺は人生をやり直したいと思った事はほぼないのでそんなにこの設定は楽しめていないけれど大人になってからの留津(ルツ)が様々な場面を通じて自分や恋人、伴侶、家族、友人を見つめる「目」に自分の人生に参考になる部分が多々あった。2021/07/15
mayu
51
れんげ選書。1966年、同じ日に生まれた留津とルツ。同じ両親のもとに生まれ、出会う人たちも同じ。それなのに、自分が何を選び取り、何を大切に思うのかによって、こんなにも印象が違うものなのか。森の中を歩いていくように。無数に枝分かれした道の中から一つを選んで進んでいく。過去は今まで歩いてきた一本道。これから目の前に広がる道は無限。その時々で考えて、妥協じゃなく最善だと信じられる道を選び取ってこられたなら、辿り着いた森の出口に心から納得し、幸福に思えるのかもしれない。2024/02/07
ちぇけら
21
あるというのは、ないということである。あなたの重さを感じながら、ふとそう思った。好きというのは複雑で、遠心分離機にかけても、どんな組成なのかわからないまま。身体の核にぽっかりと穴があいて「恋」から抜け出したと思ったら、元の入り口に戻って次の「恋」を始めただけであった。わたしの人生にはあといくつ、分岐点が残されているのだろう。しかし何度繰り返しても、「幸福」に生きられる道は選べないのだろう。もう出口は見つからないかもしれないわ。思って、さっぱりと笑う。わたしはどうやら、深い森のなかに吸い込まれたがっている。2021/05/06
桜もち 太郎
19
この作家は読者を何処へ連れて行こうとしているのだろうか、読みながらそう感じた。違和感が残ったまま読み終わった。1966年生まれの留津とルツの二人の世界はパ ラレルワールド。登場人物たちも重なり合って、読んでいて混乱する。「選ぶ。判断する。突き進む。後悔する。また選ぶ。判断する。生きている限り、あらゆる瞬間に選択の機会はやってくる」その岐路での選択の違いが二人の人生の違いに現れたのか。といいつつ流津とか瑠通とか名前が出てきたり、もうチンプンカンプン。分厚く疲れる読書体験だった。2022/11/02
奏市
17
酸いも甘いもたっぷり含まれた2人(+α)の女性の人生を並走するように辿り、大満足な読書となった。岐路ごとに2人とも驚いたり不安になったりするが、思い通りにはいかないってことは誰の人生においても間違いないようで、だからこそ生きていくのは楽しいのかと気付かされた。この後どんな人生が待っているか(開いていけるか)考えると少し前向きになれた。生きていくうえでの箴言に満ち溢れた内容であり、また年を経てから再読したい。全体通すとどちらかというとルツより留津に好意を感じていた。芯が強く奥に秘めたものを感じさせる所など。2024/09/23