内容説明
薩摩藩主・島津斉彬に見出された若き日の西郷隆盛。一橋慶喜を新将軍に擁立し、国難に備えようとする斉彬の命を受け、徳川慶福を擁する井伊直弼らとの暗闘を繰り広げるが、やがて井伊は尊王攘夷へ弾圧を始める。主を病で失い、奄美に流された隆盛が抱く想いは…。西郷の理想を突き詰めた著者の傑作。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞し作家デビュー。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月23日、逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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coldsurgeon
9
島津斉彬に見出され、安政の大獄から逃れ奄美大島に潜居し、呼び戻されるまでの若き西郷隆盛の物語。維新前夜の流れはよく知られているが、維新を成し遂げた西郷隆盛は何を想い事を進めたのかは、あまり知られていないし、謎とも思われている。著者は、一つの解を提示している。道義のある国を創ろうとしていたのではないか、と。コロナ禍の日本が、経済成長を重視しすぎて道義を顧みない国になっているのを、改めて感じる。2021/02/11
shimashimaon
6
時代背景として将軍継嗣問題、条約勅許問題、安政の大獄が描かれますが、本書の主題は謎とされる西郷の人物、思想の萌芽を描くことだと思います。岡崎久彦は『陸奥宗光』で、東洋思想を拠り所とする西郷は西洋を文明ではなく野蛮とみなし(力まかせに中国を蹂躙する姿はまさにそうなのだが)、そのために帝国主義の国際政治で日本の舵取りを担うには限界があったと評しています。一方、勝海舟は聖人と評してその死を惜しんだ。近思録や言志録、王陽明略歴、奄美大島での経験の影響を垣間見れました。『天翔ける』も『翔ぶが如く』再読も楽しみです。2022/04/23
Ippei Ashida
5
将軍継嗣問題、安政の大獄から、奄美大島へ流され、鹿児島に戻るまでの西郷隆盛を描く。 これからでは‥と思うところで終わるが、島津斉彬のもとで奔走する西郷さんに着目するのが面白い。 やっぱ幕末の島津斉彬、松平春嶽あたりは渋くてかっこいい。2023/12/12
shiggy
5
今からってところですが、著者は亡くなられてたのか・・・。続きが読めなくて残念。2021/10/25
jupiter68
5
楽しかったものの尻切れトンボ。もっともっと次の西郷を書いてもらいたかった。非常に残念。ただ、愛加那と一緒にいた西郷の時間はすごく好き。徳之島での話もあったのは残念だけど、この後激動の時間に突入していく西郷の一瞬のやすらぎの時間があったことを改めて読めたのはよかった。2021/06/26