内容説明
「お前の居場所は、俺が作るから。泣くな」ピアノだけが友達の孤独な少女の夏子は、異彩の少年・月島と出会い、振り回され、傷付きながらその側にいようとする。やがて月島は唐突に「バンドをやる」と言い出した。彼は、夏子の人生の破壊者でも創造者でもあった―。直木賞候補となった鮮烈なデビュー小説。
著者等紹介
藤崎彩織[フジサキサオリ]
1986年大阪府生まれ。2010年、突如音楽シーンに現れた4人組バンド「SEKAI NO OWARI」でピアノ演奏とライブ演出、作詞、作曲などを担当。文筆活動でも注目を集め、2017年に発売された初小説『ふたご』は直木賞の候補となるなど、大きな話題となった(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
181
セカオワの日常を垣間見たような物語。私小説的な感じもする。月島が心の病気だとしてもだ、病気だから何を言ってもいいのかと言いたくなり、なんか腹が立ちましたね。どんなに酷い言われ方としても、ついていく夏子も夏子だと思いつつも、もう好きだの愛だの越えて、それは情が入ったんだろうなと思うけど、夏子にも腹が立つというか…。イライラしました。人はそれぞれ、恋人達もそれぞれ。まあ、月島と夏子の関係は恋人というか、兄妹のよう。決してふたごではないなと。そして、二人とも生き方が不器用だと個人的には思いました。2022/09/25
遥かなる想い
133
「ふたご」のように思われて生きた彼との物語である。月島への想いが清澄に語られる。 出会いから バンドデビューまでの日々が 丹念に描かれる…やや単調だが、真摯な想いが 印象的な …そんな作品だった。 2021/08/09
美登利
96
衝撃的でした。直木賞候補になった時に読もうと思っていましたが、なかなか手に取れず。文庫本はあとがきや解説があるから良かったです。藤崎さんのバンドは歌番組で知っているくらいですが、もしかして私小説なの?と思ってここまで書いても大丈夫なのかしらと気になりつつも。ファンだったら始終モヤモヤが止まらないかもしれないな。そのくらい主人公の夏子と月島の関係がとても辛くて狂おしい気持ちになりました。多感な中学生の頃の出会い。それをずっと引きずってしまうのは何となく分かるようで少し青春時代に戻った気分です。2020/10/19
fwhd8325
82
読書をしていて、こんなに動揺したのは初めてかもしれません。上手く言葉で表現できないけれど、怖かった。激しくて繊細。どう扱い、接したらいいのかわからない世界。それでも、次から次へと誘う魅力を感じていました。感性の塊のような物語だと思いました。解説を宮下奈都さんが書かれていますが、これがとてもわかりやすく丁寧です。2020/09/13
ひめか*
42
心理描写が上手い。二人の関係はもどかしくも愛おしい。月島は私が出会ったことのないタイプで、どこに飛んでいくのか、不良なのか真面目なのか分からなくて、そういう危うさに私も一緒に何度も振り回された。ちゃんとしてよと言いたいけど、月島はいつも良いことを言うし、言い分にも一理あるなと考えさせられる。何の前知識もなく読んだけど、セカオワの誕生か?と思った。どこまで現実とリンクしているのかは明らかにされていないが、やはり深瀬さんとさおりさんに重なって、こうやってバンドが生まれたのかなと感じた。そう考えると感動的だな。2021/03/02