出版社内容情報
日本、朝鮮、琉球。東アジア三か国を舞台に、侵略する者、される者それぞれの矜持を見事に描き切った歴史小説。松本清張賞受賞作。
内容説明
戦を厭いながらも、戦でしか生きられない島津の侍大将。被差別民ながら、儒学を修めたいと願う朝鮮国の青年。自国を愛し「誠を尽くす」ことを信条に任務につく琉球の官人。秀吉の朝鮮出兵により侵略に揺れる東アジアを、日本、朝鮮、琉球の三つの視点から描く。直木賞作家のデビュー作にして松本清張賞受賞作。
著者等紹介
川越宗一[カワゴエソウイチ]
1978年鹿児島県生まれ、大阪府出身。龍谷大学文学部史学科中退。2018年『天地に燦たり』で第25回松本清張賞を受賞しデビュー。19年8月刊行の『熱源』で第9回本屋が選ぶ時代小説大賞、第162回直木賞を受賞する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
のり
80
秀吉の愚行、朝鮮出兵の元に繰り広げられる侵略に島津家の重臣・朝鮮国・大明国・琉球国の視点で描かれる壮大な世界。儒学を通し仁義礼智を秘め、己に問い人を追求する。互いの立場で守るべきものもあるが糺せば同じ。戦に膿むのも道理である。無益な血が流れるだけである。利益だけを追求すれば疲弊する国は当然出てくる。徳川の世になり一定の秩序は保たれる事になる。漢臭さが堪らなく良かった。2020/12/02
あすなろ@no book, no life.
78
川越氏のデビュー作。直木賞 熱源と同じく、知られない歴史の一幕を舞台に骨っぽく、そして新人らしく荒っぽく描く。これは良き意味で。今回は、琉球と朝鮮と明と島津家が舞台。なお、わざと左記は同類語で並べていない。これらの単語につき本作品に描かれる各々の歴史世界は、僕にはほぼ未知の歴史。それらが荒っぽく折り重なる物語の末に、琉球の守礼之邦の扁額が掲げられた守礼門を描くラストシーンまで一気に読者は川越氏の筆によりこれら歴史の激流を掻くのである。その後の守礼門のラストシーンは感慨深い。圧倒された。2020/07/04
Yuma Usui
48
大友と島津の争いを起点とした、薩摩、琉球、朝鮮の異なる地に住む3人の若者による「礼」を巡る歴史小説。論語や大学など、儒教国家として共有する学問についてそれぞれの体験や解釈で自己の力や指針にしている点で三者三様の趣があり面白い。有名な武将は脇役に留まり分かりやすい血湧き肉躍るような話はないけれど、個々の理想の成就や葛藤を克服しようと抗う姿には確かな力強さや熱さを感じさせてくれる。読後、那覇の守礼門を訪れた時には感慨深いだろうと思う。2020/12/06
てつ
26
戦国末期の朝鮮出兵を中心とした3人の若者の話。分かりやすいが感情移入できないのは私に向上心がないからか。とりあえず次作は読もうと思う。2023/04/02
エドワード
24
安土桃山時代の東アジア。薩摩の島津家家臣・大野久高、朝鮮国の明鍾、琉球国の真市の三人の視点から俯瞰してみよう。東アジアの中心は明帝国だ。しかし天下を統一した豊臣秀吉は、その明の征服を望む。まず朝鮮へ兵を出し、島津家も海を渡る。朝鮮の被差別民・白丁の明鍾は、この戦争を利用して戸籍を焼き、洪明鍾を名乗る。真市は密偵だ。三者三様の目的を持ち戦地で出会う。秀吉の死で戦は終わるが、間髪を入れず島津家の軍が琉球国を襲う。明鍾と真市の目に映る日本軍など、視点が実に斬新だ。朝鮮と琉球は儒教の国。殊に礼を以て国を守るのだ。2025/11/17
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