出版社内容情報
一九八四年、台湾で四人の少年たちは友情を育んでいた。三十年後、人生の歯車は彼らを大きく変える。圧倒的熱量で描く青春ミステリ。
内容説明
2015年冬、アメリカを震撼させた連続殺人鬼“サックマン”が逮捕された。彼の弁護を担当することになった国際弁護士の「わたし」は、30年前に台湾で過ごした少年時代を思い出していた。当時、13歳だった「わたし」は“サックマン”のことを確かに知っていたのだ―。台湾を舞台に贈る青春ミステリの金字塔。第34回織田作之助賞、第3回渡辺淳一文学賞、第69回読売文学賞小説賞、三冠達成!!
著者等紹介
東山彰良[ヒガシヤマアキラ]
1968年台湾生まれ。幼少期を台北で過ごした後、日本に移る。2003年、「このミステリーがすごい!」大賞銀賞・読者賞を受賞した『逃亡作法 TURD ON THE RUN』で作家デビュー。09年『路傍』で大藪春彦賞、15年『流』で直木賞、16年『罪の終わり』で中央公論文芸賞を受賞。17年に刊行した『僕が殺した人と僕を殺した人』では読売文学賞、渡辺淳一文学賞、織田作之助賞の3冠に輝く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しんたろー
184
久々の東山さんは名作との誉れ高い本作…1984年頃の台北を中心に、現在の2015年デトロイトが挿入される構成は「誰が犯人なのか?」というミステリ要素を含みながら、ユン、アガン、ジェイ、中学生三人を中心にした青春&家族ドラマ。陰鬱な家庭事情を抱えた彼らの等身大とも思える日々を当時の台湾と現在の事件に絡めてグイグイ読ませる。80年代は私の青春時代でもあるので懐かしい描写が多いし、ユンたちの言動が我が事のように感じた。所々で文学調になるので、同じ台湾なら『流』の方が読み易いが、彼らの切なく熱い友情が胸に沁みた。2021/06/07
★Masako★
87
★★★★東山彰良さん初読み♪2015年冬、アメリカで連続殺人鬼"サックマン”が逮捕された。弁護を担当する事になった「私」は、少年時代を思い出す…1984年頃の台湾。家庭に問題を抱え、傷つき傷つけ合いながら共に過ごした4人の少年、ユン、アガン、ダーダー、ジェイ。雑多な匂いと差別と混沌とした空気の流れる場所で、もがき生きる少年たちが危うくて痛々しい。サックマンは誰なのか?たっぷりと描かれた少年時代に現在を絡ませ、一つに繋がった時の衝撃と切なさ。読了後、装丁の少年たちを眺めながら胸が熱くなり涙がこぼれた。名作!2021/06/16
ゆいまある
86
名作「流」と同じく台北から始まり、お馴染みの人々も出てくるので続編のような気持ちで読み始めた。エピソード多過ぎ、登場人物の属性多過ぎでまどろっこしいが、前半は圧倒的なリズムのお陰で読めた。もう全く受け付けなかったのはデトロイト編。連続殺人犯の動機が曖昧過ぎる。殺人犯は愛すべき人だったとセンチメンタルに言いたいのか。にしては起こした事件が陰惨過ぎてバランスが取れてないんだが。オーウェルの一九八四や、AKIRAのオマージュでもあるようだから(ジェイが金田でユンが鉄雄か)違う読み方もできるのかも。不完全燃焼。2023/06/24
あすなろ
86
彼の中には殺人者がいる。しかも6人も。最後の1人がサックマン。彼は死刑になる。それをしかも望んでいる。でも僕は彼を知っているのだ。1984年の台湾で。私達は当時13歳だった。正直、期待して書店で購入した時抱いた所感より読みにくかった。僕には頭に入りにくかったと思う。しかし、解説の小川洋子氏ではないが、何か頭の中に残る作品であったことは事実。濃厚で蒸し暑く雲が垂れ込めた感のかつての台湾の少年達の危なげな空気感。そして、残りは一気に。サックマンと僕と彼等のかつての共通知のパズルのピースが合い始め、明確な構図へ2020/11/30
ずっきん
81
小川洋子氏の解説めあて。さらに好きなシーンを読み返してたら、けっきょく全部再読してしまった。もう、せつなすぎて、痛い痛い痛い。刺さるというか覆われて締められて、呪詛吐きたくなるレベル。再読でよりヤラれてしまう。やっぱり配りたい。2021/05/20