出版社内容情報
舞台は文政13年(1830年)の京都。年若くして活花の名手と評判の高い少年僧・胤舜(いんしゅん)は、ある理由から父母と別れ、大覚寺で修行に励む。
「昔を忘れる花を活けてほしい」「亡くなった弟のような花を」「闇の中で花を活けよ」……次から次へと出される難題に、胤舜は、少年のまっすぐな心で挑んでいく。
歴史、能、和歌にまつわる、あるいは生まれたままの、さまざまな花の姿を追い求め、繊細な感受性を持つ少年僧が、母を想い、父と対決していくうちに成長をとげていく、美しい物語。
内容説明
物語の舞台は、文政13年(1830)の京都。活花の名手と評判の少年僧・胤舜は、ある理由から父母と別れ、大覚寺で華道の厳しい修行に励む。「昔を忘れる花を活けよ」「闇の中で花を活けよ」…次々と出される難題に、胤舜はまっすぐな心で挑んでいく。歴史、和歌、能の知識と著者特有の陰影を帯びた美しい物語。
著者等紹介
葉室麟[ハムロリン]
1951年北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞し作家デビュー。2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞を受賞。2017年12月23日、逝去。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chantal(シャンタール)
87
生花の才に溢れた大覚寺の少年僧胤舜は実は後の老中、水野忠邦の庶子であり、母とも引き離され出家したと言う出自から感情を表さない。師匠に「美しさはあるが心がない」と言われ、人のために花を生ける修行に励む。生花だけでなく、人としても成長していく。京都の寺や四季の美しさ、和歌や能、伊勢、平家物語。花は人々や歴史の傍にいつでもその命を輝かせていたのだなあ。「迷わず生き抜くことに人の花がある」桜は決して儚く散って行くだけではない。短い時間に命の喜びを迸しらせているのだ。誰もが人生に美しく花を咲かせているのだ。2020/09/12
ふじさん
83
大覚寺の少年僧・胤舜が自らの活け花修行を通じて、己を取り巻く世の悲哀を体験し、乗り越えて成長する姿を描いた作品。訳あって別れた父母に思いを馳せながらも、懸命に華道の修行に励む日々、思わぬ母と父との出会いで人生の大きな転機を迎える。次々と出会う難題に挑み、華道の道を究める。歴史上の人物も登場し、歴史、和歌、能、華道の知識と著者特有の陰影を帯びた美しい物語。著者の作品では、花がよく出てくるが、人の成長を単純に花にたとえたのではなく、この世の喜怒哀楽を命を繰り返し紡ぐ花に重ね合わせているのではないだろうか。2023/07/20
そうたそ
13
★★☆☆☆ 十九世紀の京都、大覚寺で修行に励む少年僧・胤舜は活花の名手として評判高かった。次から次へと出される難題に挑みながら、自身もまた成長を遂げていくストーリー。何とも静かで落ち着いた趣のある雰囲気で、心地よくそこに身を委ねられる。京都という舞台と、作中で描かれる活花の慎ましやかな美がピッタリと合っていたように思う。ガッツリとストーリーを追う、というよりは、ストーリーの心地良さを味わいつつ楽しむような一冊であるかのように思った。2024/02/11
きょう
12
各編に花の絵の中表紙がありました。先に花材を見てから活ける過程を楽しむこともできるかも。大覚寺の僧侶、生け花を所望する女性、みなみなが訳ありで、自分では生き方を変えられない。読み進める中で窮屈に思うことも度々でしたが、植物はまさしくそこに咲くしかないのだなと思い至りました。2021/02/15
にこ
11
嵯峨御流の話かな?と読んでいました。習っていたので。胤舜は本当に父親を許せたのかな?それにしても敵が多い。源助が頼もしい。2021/02/10