出版社内容情報
単行本刊行時に賞賛と非難の十字砲火を浴びた「UWF本の発火点」。「プロレスから格闘技へ」の過渡期を描く傑作ノンフィクション。
内容説明
1984年、UWF誕生。新日本プロレスへの復讐のために誕生した団体は元タイガーマスク・佐山聡の大胆な構想のもとプロレスから逸脱していく。若者はUWFを真剣勝負のプロレスとみなして熱狂した。しかし―。プロレスから総合格闘技への過渡期に痛烈な一閃を浴びせ、大反響を呼んだ迫真のノンフィクション。渾身の文庫化!
目次
北海道の少年
リアルワン
佐山聡
タイガーマスク
ユニバーサル
無限大記念日
シューティング
訣別
新・格闘王
新生UWF
分裂
ヴァーリ・トゥード
著者等紹介
柳澤健[ヤナギサワタケシ]
1960年、東京都生まれ。慶應義塾大学法学部卒業後、メーカー勤務を経て、文藝春秋に入社。編集者として『スポーツ・グラフィックナンバー』などに在籍し、2003年にフリーライターとなる。07年に処女作『1976年のアントニオ猪木』(文藝春秋)を発表。09年「日本レスリングの物語」でミズノスポーツライター賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
森オサム
41
著者初読み。UWFには第1次と第2次があり、エースもフロントも違っていた。特に第2次のブームは短期間とは言え物凄くて、エースの前田日明は大スターで有り正義であった。なので、本作の描き方が佐山聡が正義であり、前田日明が嘘つきで勘違いした人物にされている事に抵抗を感じる人は多いと思う。ただ、UWFは全てプロレスであった事、恐らく初期のリングスもプロレスであった事を認めないのは不誠実で、前田日明の言う事を信じられないのは仕方無い。しかしながら、佐山聡の人間性がそれ程信用出来ないのも、また正直な感想。難しいネタ。2021/05/02
緋莢
18
タイガーマスクブームにわくなか、新日本プロレスの儲けのほとんどが、アントニオ猪木の会社「アントン・ハイセル」に流れていたことから起こったクーデター。一度はアントニオ猪木が新日本プロレスを追放されるも、テレビ朝日の専務の鶴の一声によって、戻ってくる。しかし、猪木と共に追放されながらも、戻れなかった新間寿は復讐を決意、フジテレビをバッグに「ユニバーサル・プロレスリング」という新団体を結成します。猪木、長州ら主要選手を引き抜き、アンドレやホーガンも呼んで、新日本プロレスを抜け殻同然にしてやる!(続く 2020/07/02
こまごめ
17
柳澤本3冊目。猪木のプロレスこそ最強格闘技という思想の実現がUWFでしたが、実は真剣勝負は月1興行が限界でしかもファイト内容が地味なので、真剣勝負風味のプロレスをするしかなかったというお話。youtubeで前田日明が常々俺はアントニオ猪木がやろうとした事をやっただけという言葉がこの本を読むと理解できる。この本を書くのに前田日明本人からの証言を全くとっていないというのがミソ。 しかしこの本を激推ししていた水道橋博士とこの本を批判している前田日明がyoutubeで仲良くご飯を食べているというのは感慨深い。2022/09/04
nishiyan
16
2017年刊『1984年のUWF』文庫版。クリス・ドールマンのインタビューと「1981年のタイガーマスク」などが収録されている。中井祐樹、佐山聡、前田日明の三人を通して、UWFの誕生から終焉、総合格闘技の勃興を描いている。総合格闘技を志向し、団体を立ち上げ、ルールなど一から作り上げた佐山。その佐山が残した数々の遺産を興行として成立させたのが前田。この大きな流れに中井の視点がちりばめられているところが実に面白かった。多くの遺産を残しながらも理解されることがなかった佐山聡の栄光と挫折を思うと泣けてきた。良書。2020/03/18
武井 康則
12
夢があって胡散臭い、近づきたくて、でも騙されるのが怖い。そんなプロレスにタイガーマスクが現れた。古舘伊知郎が絶叫し、人前でプロレスの話ができるようになった。Uに発展し、プロレスは明確になるはずだった。総合格闘技、桜庭和志が言ってくれた。でも中心になったUってなんだったんだ? Uの残滓はいまだにくすぶりながら、うさん臭さもそのままだった。それを隅々まで払拭してくれる。少年時代の思い出でもあって、だから読み終えたら、ひたすらせつなくなった。2020/04/15