出版社内容情報
謎の飛行機事故が多かった七〇年代のアメリカで、事故原因をダウンバーストという気象現象だと突き止めたのは日本人天才科学者だった
内容説明
1975年6月。NYでイースタン航空機が墜落した。誰も解明できなかった事故の原因を突き止めたのが、日本人科学者・藤田哲也。「気象学の世界にノーベル賞があったら間違いなく受賞していた」と言われた天才科学者は、人類史に偉大な功績を残した。日本ではほとんど知られていない、彼の数奇な運命をたどる。
目次
序章 離陸
第1章 魔の風
第2章 謎の男
第3章 幸運
第4章 米国
第5章 日本
第6章 原爆
第7章 論争
第8章 勇気
第9章 変化
第10章 人生
終章 着陸
著者等紹介
佐々木健一[ササキケンイチ]
1977年、札幌市生まれ。早稲田大学卒業後、NHKエデュケーショナル入社。ディレクターとして特別番組を企画・制作。『Dr.MITSUYA』でアメリカ国際フィルム・ビデオ祭2016ドキュメンタリー部門(健康・医療分野)シルバー・スクリーン賞、『哲子の部屋』で第31回ATP賞優秀賞、『辞書になった男』の元となった番組『ケンボー先生と山田先生~辞書に人生を捧げた二人の男~』で第30回ATP賞最優秀賞、第40回放送文化基金賞優秀賞を受賞。初著作である同書で第62回日本エッセイスト・クラブ賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hatayan
35
飛行機が突然墜落する原因を、上空からごく狭い範囲で地上に押し寄せる衝撃波「ダウンバースト」であることを明らかにし、飛行機の安全運行に多大な貢献をした気象学者・藤田哲也氏の評伝。若くしてシカゴ大学の教職に就いた藤田は、優れた観察力をもとに直感に従った自説を査読に付さずに世に問い、見事に実証することで世論を味方につけます。ある意味無謀でしたが、誰もが思いつかないことを現場で愚直に探求する姿勢は先駆者そのものでした。 安全であることが当たり前と思えるまでに先人の努力や挑戦があったことを知ることのできる一冊です。2019/11/26
雲をみるひと
12
竜巻などメソ気象学の大家である藤田哲也氏の生涯を取り上げたテレビドキュメンタリーを書籍化したもの。筋が明確でわかりやすく一般的にはさほど有名とは言えない藤田氏を知ることができる。放映時に盛り込めなかったエピソードを相当追加したらしくエピソードは豊富だが、各々のエピソードはさほど深掘りされていない。テレビ番組らしい作品。2019/12/31
鮫島英一
11
フジタモデルの名は気象学に興味のない僕でも、天気予報や災害などを扱った番組聞いたことがある。それ以上は知らないという人が大部分だと思う。この書籍はあまり知られていない「 藤田哲也」氏の足跡と挑戦の日々を辿る物語である。語られる物語はどれでも面白く、そして逆境との戦いだ。僕なりに藤田氏を解釈すると、ひたすらに前向きな天才的仕事人間で、良くも悪くも昭和の人。藤田氏ほどではないにしても、あの時代は大なり小なりこのような思考の人間が結構いたのだ。そういった人間の思考を知るという意味でも、手に取る価値があると思う。2021/09/21
海燕
10
科学系の読み物だが、それに留まらず異国で研究に情熱を注いだ日本人の物語として面白く読んだ。藤田哲也の名前は、国際的な竜巻の規模の尺度である「藤田スケール」で有名だが、ダウンバーストという気象現象を明らかにし、飛行機事故の減少に大きく貢献していたことも本書で知った。1920年生まれ。幼少時から科学の才はありながら、気象を専攻せず渡米し、現地で研究生活して功績を残す。異端視されて、日本の気象学会でも当初はあまり受け入れられていなかったようだ。藤田と同郷である毎日新聞の元村さんが書いた解説もよかった。2023/10/17
mft
6
竜巻のFスケールやダウンバーストの研究で(アメリカでは)有名な藤田哲也の生涯をたどったノンフィクション。取材している語り手と取材相手が前面に出ていて、半分ぐらい取材記みたいな文章だ。藤田氏が論文誌に投稿しないスタイルだったというのは、それでいいのかという意味で、驚いた2023/06/03