出版社内容情報
北関東の集落の家々の壁にひたすら絵を描く寡黙な男。その理由は? 沈黙の裏に隠された孤独な彼の半生と悲しい真実が明らかに。
内容説明
北関東に、家々の壁に原色で描かれた稚拙で奇妙な絵で話題となり注目を集める小さな町があった。描いているのはすべて、ひとりの男だという。ライターの「私」はその男・伊苅にインタビューを試みるも寡黙でほとんど語らない。周囲に取材を重ねるうちに、絵に隠された真実と男の孤独な半生が明らかに―。
著者等紹介
貫井徳郎[ヌクイトクロウ]
昭和43(1968)年、東京都生まれ。早稲田大学商学部卒業。平成5(1993)年に、第4回鮎川哲也賞の最終候補作となった『慟哭』で作家デビュー。22(2010)年に『乱反射』で第63回日本推理作家協会賞を、『後悔と真実の色』で第23回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
三代目 びあだいまおう
316
タイトルも、文庫裏の内容紹介も、私の興味センサーを微塵も刺激しない。大切な読友さんのレビューが目に飛び込み、それだけが私の興味を刺激した。結論は...大傑作!『誰が何のために壁に絵を描いているのか』という謎は早々に解明し、残る350頁で何を紡ぐのかと心配になる。第二章で描かれる家族の哀しき宿命に私の心は激しく痛んだ。力が抜け、崩れ落ちそうになる。人が己の内に隠そうとする過去の傷や劣等感。壁とはあるいはそれらの象徴なのか。男が壁に絵を描き続ける理由、最後に迎える真相に脳天を貫かれたのは私だけではない‼️🙇2020/09/29
青乃108号
186
なんとも地味なタイトルに意味不明な装丁画。ある田舎に、町中が絵で覆われた不思議な場所がある、とSNSで話題になっているという。田舎町なのに絵のおかげで観光客が増えているらしい。描いているのはたった1人の男。しかも上手い絵ではない、子供の絵かと思われる程の下手くそな絵。町の家の壁やら塀やらに一心に描き続ける。何故男は絵を描き続けるのか。物語は時系列を行き来しながら、男の過去をじっくり語る。決して順風満帆ではなかった、その悲しい過去。そしてついに訪れる、ラストの1ページには心が震えた。しばらく動けなかった。2023/10/31
イアン
139
★★★★★★★★☆☆一人の男の半生を綴った貫井徳郎の長編。町一体の壁という壁に稚拙な絵を描き続ける初老の男・伊苅。その動機や行動原理を探るため、ルポライターの鈴木は伊苅の元を訪れるが――。物語はやがて伊苅の娘・笑里の闘病、妻・梨絵子との出逢い、更には中学時代へと遡っていく。「なぜ男は壁に絵を描き続けるのか」というミステリとしては弱めの〝引き〟だが、読み進めるうちに回収される伏線(梨絵子の母性の欠如など)も多く、構成の巧さが光る。一方で結末に唐突感もあり、描く男・伊苅と描かない男・貫井の対比が印象的だった。2026/06/01
アッシュ姉
98
民家の壁に大胆に描かれた奇妙な絵。子供の落書きのような絵が町中へ広がっている不思議な光景。なぜ彼は絵を描き続けるのか、なぜ人々は彼の絵に惹きつけられるのか。男の半生を紐解いていくことで明かされる。時系列と語り手を変えながら過去へ遡り、思いもよらない着地点へ辿りつく。エピローグを前にぷつんと終わった印象だが、疑問点はすべて氷解したので不満はない。完結と筆をおき倒れこむ作者の姿が浮かぶような終わりだった。静かな力作長篇。2020/04/27
りゅう☆
86
家の壁に稚拙な絵を描き続ける伊苅。町人はなぜ描いてもらうのか?ライター鈴木が伊苅を知る人物から伺うも明らかにならない…んだけど物語は伊苅の人生を追う。故郷に戻って一人で塾講師兼利屋をする伊苅。だが彼には幼き娘がいた。妻との出会いと別れ、美術教師だった母の才能に嫉妬する父。順風満帆でない人生の伊苅の過去を知るたびに不憫に思う。そして社会人時代に出会った友人夫婦との関係。色々なことがあったからこそラスト1行で絵を描き続ける理由に伊苅の心の温かさをみた。こんなミステリーもありなのねと貫井さんの構成力に脱帽です。2022/03/14
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