出版社内容情報
木犀の香が漂う夜、晴明と博雅、蝉丸が酒を飲んでいると天から斧が降ってきて――陰陽師安倍晴明の活躍を描く人気シリーズ第十五弾。
内容説明
半月ほど前に、藤原兼家が捕らえた兎は全身黒い毛で覆われていた。しかし、この兎、奇妙なことに日ごとに白い毛に変わり始め、その上人語を話し出したというのだ。「晴明を呼べ」と…。『嫦娥の瓶』など全9篇。晴明と博雅が活躍するシリーズも、遂に第15弾!もちろん蘆屋道満や琵琶法師・蝉丸も登場。
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
昭和26(1951)年、神奈川県小田原市生れ。48年、東海大学日本文学科卒業。52年、「奇想天外」誌に「カエルの死」を書いてデビュー。『上弦の月を喰べる獅子』で、平成元年に第10回日本SF大賞を受賞。『神々の山嶺』で、10年に第11回柴田錬三郎賞を受賞。『大江戸釣客伝』で、23年に第39回泉鏡花文学賞、第5回舟橋聖一文学賞、翌年に第46回吉川英治文学賞を受賞。30年に紫綬褒章を受章。山岳、冒険、ミステリー、幻想小説などの分野で広範な読者を魅了し続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
129
2年前にハードカバーで読んでいるのですがいつも通りに文庫版で再読です。印象は天候や月などに関するものが多く自然をより感じました。とくに木犀月という短編は百人一首でも有名な蝉丸法師と晴明、博雅の3人が月を鑑賞している話ですが、墨絵のイメージが出てきて高畑勲監督に短編の映画化でもしてもらいたい感じがしました。2019/06/20
アルピニア
68
陰陽師シリーズ第15弾。月の兎が登場する「嫦娥の瓶」、水に映った顔を好きなように書き換える験力を持つ筆の話「水化粧」など9篇。博雅の笛が晴明の予想を越えた結果を招く「魃の雨」と、博雅の笛と蝉丸の琵琶が仙人を呼び寄せる「木犀月」が特に良かった。いつもながら、楽の音の描写がとても好きだ。風景が広がり、音が聴こえてくる。心が静かに解放されていく。また至福の時を過ごすことができた。着想を得た元の中国の話(嫦娥や魃の話)も読みたくなる。2019/06/10
眠る山猫屋
65
やはり、良い。邯鄲。草雲雀。松虫。鈴虫。なんて羅列を見つける度に、数十年変わらぬクオリティが甦るよう。変わってきたのは、やはり蘆屋道満。不敵な敵役が、いつの間にか想いを隠した照れ屋の良い漢になってきた。なんなら清明たちより素敵かも(笑)そんな道満の『道満月下に独酌す』がほんのり優しくて切ない。平安の闇は色々なものを隠してしまうから、すれ違ってしまった気持ちは更なる闇の奥に消えてしまう、そんな原点回帰の物語が多かったかな。2019/06/11
ちぐりん
56
「どうだ博雅、ゆくか」「う、うむ…」「ゆこう」「ゆこう」そういうことになった――― このいつもの流れを見るだけで心が踊ります。玉兎ノ巻とあるように、月にまつわるお話の1冊でした。はるか太古の時から美しく満ち欠けを繰り返し、いつの時代も人間を魅了してやまない。人の心を惑わせ、癒す力もある月。 その月明かりのもとには、博雅の葉二と蝉丸の琵琶、四季折々の花が咲き、虫の声が聴こえる晴明の庭。 ひとつひとつのお話は、以前よりも怖さがなくなったような気がしますが、やっぱり大好きです。2019/08/10
Richard Thornburg
46
感想:★★★ シリーズ第15弾! 9篇の短編で構成されています。 どの話も雅な雰囲気の中で進んでいくのですが、それぞれに異なる季節感を持たせているのはいいですね。 どの作品も粒ぞろいで面白いのですが、個人的には『魃の雨』が一番印象的でした。 今でも科学的に解明されていない現象は多々あると思うのですが、平安時代であれば単なる自然現象でさえ説明できなかったんだと思います。 2020/05/22