内容説明
人生の大半を路上で過ごしてきた、ろくでなしの青年・グン。妻・娘とともに施設に入所した桧山優作が、幼い息子だけを置き去りにしたのは何故なのか。心象風景=“道”を歩いたグンは、驚愕の真実に突き当たる…。古より存在する「歩く者」たちと、世界の壮大な意味。圧巻のラストへと導かれる異次元ロードノベル。
著者等紹介
真藤順丈[シンドウジュンジョウ]
1977年生まれ。2008年「地図男」でダ・ヴィンチ文学賞大賞、「庵堂三兄弟の聖職」で日本ホラー小説大賞・大賞、「東京ヴァンパイア・ファイナンス」で電撃小説大賞銀賞、「RANK」でポプラ社小説大賞特別賞をそれぞれ受賞しデビューする。『宝島』が2018年第9回山田風太郎賞を受賞、同作で2019年第160回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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papako
75
面白かった!これは好き。人の人生を〈道〉として歩く〈落伍者〉タイゼンとグン。その人の心象風景から、その人の問題を読み解く。落伍者は死んでいる。息子を車でひいてしまった父親、カルトの犠牲になった娘、死への忌避感が薄い母親。彼らは家族に戻れるのか。息子のマナブは歩くのか?そして人はなぜ歩くのか?人の人生を1400年歩き続けたタイゼンは何を思い歩いてきたのか。作者らしい汚なさ、えげつなさがあるので、人には勧めない。過去も未来もごちゃ混ぜのタイゼン。彼を歩いたグンに引き継がれる。よかった!2021/02/02
goro@80.7
49
どんな旅が始まるのかと思えば、話は予測不能な異次元に連れていかれました。結局誰も救えなかったのか、とも考えたけど檜山にしても葵衣子にしても少しは道を戻せたのかとも思う。日菜子にしてもマグサを追い出せた分、光は見えてくるのだろう。タイゼンにはお疲れ様をとグンには頑張れよと声を掛けてあげたい。作家こそ道行きの人だと思う。2020/09/01
翔亀
44
【物語3】本は読む時を選ぶというが、本作は人生を振り返りたい時に最適だろう。今の私は完全にシンクロしてしまった。その意味で最高傑作だ。物語としての完成度も高い。■何にシンクロしたか3つだけ挙げておこう。1)設定。人生をその人の意識内に潜り込んで探るという物語だ。まあファンタジーということになるが、これまで生きてきた人生が本人の心象風景に彩られた一本の道として視覚的に表現される。幸福な時期は美しい庭園であり、不幸な時は暴風雨の荒々しい断崖絶壁の道となる。これがリアルなのだ。自分の一生はどんな道だったか↓2021/09/04
hide
18
どんな人間にも人生があり、歩んできた道がある。その「道」に入り、その人間の辿ってきた人生を辿ることのできる特異能力者たちがいる。道ってなんだろ?ついつい我々は道を探してしまう。一度でも歩いた場所が道になるのであれば、人生もまたきっと一本の道として、その心象を風景として記録される。その道を歩ける者がいるとしたら?その歩く者たちの役割とその意味が、新たな世界を創り出す真藤ワールド。2023/05/02
たこやき
16
正直なところ、序盤、どういう設定なのかがよくわからないままに始まった物語に戸惑った。が、人生の心象風景を巡る旅、というものが始まって引き込まれ、そこから、主人公・グンがどういう存在なのか、という次々と来る「実は!」でどんどん読むスピードが上がっていった。ただ、最後まで読み終わってみると、何か中途半端な感じもしないでもないような気も……。でも、心象風景の旅が、その人生の現在に達すれば終わるように、生きている、ということは「先がある」ということ。この終わりは、その象徴なのかな?2019/06/12