出版社内容情報
かつて日産に君臨した“天皇”塩路一郎。自動車労連会長にして、社長人事をも左右した男の正体に迫り、同社の企業体質を炙り出す。
内容説明
かつて日産自動車に君臨し“天皇”と畏怖された男・塩路一郎。組合員二十三万人の労働組合の総帥として、社長人事に影響を及ぼし、経営を歪め、社内紛争を長引かせる一方、豪華クルーザーで遊び、愛人を囲い、私利私欲を極めた。なぜ彼は権勢をほしいままにできたのか。大企業の病巣に切り込む迫真の実録小説。
著者等紹介
高杉良[タカスギリョウ]
1939年東京生まれ。化学専門紙記者、編集長を経て、75年に「虚構の城」で作家デビュー。経済界全般にわたり、綿密な取材に基づき、話題作の数々を発表する。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
329
ゴーン事件もあり、チャンスと見て改題出版。売れているようだが、高杉作品の中で、とりわけ面白い一冊でもない。社長と労働組合会長の軋轢を実話ベースで描いており、そうなると、現実が煮え切らない展開だと、当然、小説も倣って中途半端なものになる。塩路会長のヒールっぷりはまずまずなものの、カウンターとなる石原社長の対応が、良くいえば大人、悪くいえば、消極的過ぎて後手に回りすぎているように見え、対立の構図が際立たない。執筆時期も、事の直後過ぎて、日産の凋落を描ききるにも至らず。淡々と出来事が紹介されて終わってしまった。2019/05/17
まつうら
26
日産労組トップの塩路一郎の悪行をこき下ろした作品。著者の厳しい筆致もさることながら、読み進めると塩路に対する怒りがメラメラと湧き上がってくる。塩路のやっていることは、本来の労使交渉の枠を逸脱しており、経営権を侵害するものだ。そうまでして経営に具申したいならば、株主となって臨時株主総会を招集すべきだと思う。労組の会長としてやるべきことではない。しかし、巻末で解説者は、労組の増長を認めてきた日産の経営陣にも問題があることを指摘している。いまの日産経営陣は、労組の増長を振り切ったと言えるのだろうか?2022/02/13
mattu
16
読み難かったですね。時代背景がわからないのか?興味が惹かれなかったのか?2021/07/04
takam
16
日本で労働組合が強かった時代を知らないせいで、経営側が組合と折り合いがつかないことについて理解ができない。当時の人たちからも塩路氏の行動が理解がされていないことは、労働組合のリーダーが会社の意思決定権を持っていることは当時から奇妙であることが伺える。権力が2つ存在する状態では正しい判断がされずにじわじわと会社の体力が失われていくことは安易に予想がつく。男のプライドが邪魔をするのか権力闘争は組織を疲弊するだけだと思った。こうやっているうちにトヨタには水をあけられて、ルノー傘下に入り今の状態になったのだろう。2019/12/01
タカボー
13
昭和50年代の日産のドキュメント。社長より一回りも若い労組の会長がこんなに力を持ってるのが凄い。人事権の魔力。組合のトップのあり方を考えさせられる。労働者を背後に経営陣の暴走を牽制する役割は重要だと思うけど、組合のリーダーが力を持ちすぎる弊害も見える。こういう類の話はドキドキするような攻防戦を期待してしまうけど、実名小説の限界なのかなあ。2021/10/02