文春文庫<br> ママがやった

電子版価格
¥754
  • 電書あり
  • ポイントキャンペーン

文春文庫
ママがやった

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ 文庫判/ページ数 208p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167912062
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

七十九歳の母が七十二歳の父を殺した。「ママはいいわよ、刑務所に入ったって」。一体何が? クールで時にユーモア光る巧みな物語。或る家族の半世紀を描いた、愛をめぐる8つの物語。



小料理屋の女主人・百々子(79歳)と、若いころから女が切れない奇妙な魅力をもった夫・拓人(72歳)。半世紀連れ添った男を、ある日水で濡らしたタオルを顔にかぶせ、その上に枕をおき全体重で押さえ、殺した。

急きょ集まった三人の子供たちに向かって「あんたたち、お昼食べていくんでしょう」と、百々子は米をとぎはじめる。

「ママはいいわよ。べつに、刑務所に入ったって」警察に連絡するしないでもめている三人に、のんびりした口調で話す。

死体処理の相談をする姉たちは弟・創太にブルーシートを買ってくるよう命じるが、創太の足は父親との思い出の店・小鳥屋へ向いていた――



表題作ほか、「五、六回」「ミック・ジャガーごっこ」「コネティカットの分譲霊園」「恥」「はやくうちに帰りたい」「自転車」「縦覧謝絶」の全八篇。



解説:池上冬樹

井上 荒野[イノウエ アレノ]
著・文・その他

内容説明

「まさか本当に死ぬとは思わなかったの。びっくりしたわ」79歳の母が72歳の父を殺した、との連絡に姉弟3人が駆け付けた。母手製の筍ご飯を食べながら、身勝手で女性が絶えなかった父の、死体処理の相談を始める―男女とは、家族とは何か。ある家族の半世紀を視点人物を替えて描いた、愛を巡る8つの物語。

著者等紹介

井上荒野[イノウエアレノ]
1961(昭和36)年東京都生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「わたしのヌレエフ」で第1回フェミナ賞を受賞し、デビュー。2004年『潤一』で第11回島清恋愛文学賞、08年『切羽へ』で第139回直木賞、11年『そこへ行くな』で第6回中央公論文芸賞、16年『赤へ』で第29回柴田錬三郎賞を受賞。18年『その話は今日はやめておきましょう』で第35回織田作之助賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ミカママ

481
タイトル通り、79歳の母親が72歳の父親を殺す、というショッキングな冒頭。金婚式も迎えた老夫婦の歴史を、彼らと三人の子どもたちの視点から、時を行き来しつつ物語は展開していく。人物描写やふとしたセリフに独特のひねりが効いており、思いがけず読まされた。角田光代さんいわく、荒野さん作品の魅力は「言葉で書かれていないこと」だそうだが、それが心にストンと落ちる作品でもあった。秀作。2021/02/15

ケンイチミズバ

127
不穏なタイトル。父が亡くなった時、母は「清々した。自由が来た。」と口にした。そんなもんかとも思った。私自身も悲しいとか何ともなかったし。粗暴で教養がなく、中学くらいで既にこの人バカだと思っていた。これから宅配の時代に長距離の運送会社を起業して当たり前に倒産。父さん倒産というクソマヌケな冗談に苦笑し死ねお前と言い返した。懐かしい。全くストーリーと関係ありません。母親も姉たちもあまりにあっけらかんとしてて、自分の母親と同じ匂いを感じた。濡れタオルと枕で、たぶんこんな感じの最後が何ともお似合いな父親って納得。2019/01/15

★Masako★

71
★★★ タイトルと帯から、ミステリーだと思って読んだのだが…79歳の母が72歳の父を殺したところから物語は始まる。「本当に死ぬとは思わなかったの」殺しても淡々としている母、その死を隠そうとする子供たち。どこかおかしい家族。2章目からは子供たちや母の視点で過去や現在が淡々と語られる。浮かび上がってくるのは、女癖が悪く自分勝手な父の姿、父母の影響を強く受けて育った子供たちの複雑な思い。結局何故母が父を殺したのかは明らかにされない。だが、何となく納得させられる不思議な読後感の作品だ。2019/02/05

ゆのん

60
79歳の母親が72歳の父親を殺した。『ママがやった』はそんな始まり方だ。母親と3人の子供達は筍御飯を食べながら通報するか隠蔽するか話し合う。普通じゃない…と思う。続く話も妊娠中絶や不純異性交遊、ねじれた恋愛、隠し事の発覚など現在や過去を経由し家族の絆と愛憎を描いている。シュールさとユーモア、ミステリアスに溢れた一冊。普通じゃないと思っていたが、だったら何が普通なのだろう?とふと考えてしまう。2022/08/08

雲隠れひろ吉

51
この真っ赤な表紙とタイトルに惹かれて購入。初読みの井上荒野先生でした。帯の"とてつもない傑作"までには読解力足らずでしたが、不条理で面白い作品でした。人としてダメな父親をはじめ、他の家族ひとりひとりにも裏切られるような気持ちを抱きました。背負っている過去によって生まれてきた感情なのか…。穏やかに流れる日々の中に潜む、奇怪な日常。薄気味悪さを漂わせる家族。ラストはこのお話にはピッタリなのかな。「コネティカットの分譲霊園」のお話が好きです。2019/03/09

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/13297973
  • ご注意事項