文春文庫<br> 愛の顛末―恋と死と文学と

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文春文庫
愛の顛末―恋と死と文学と

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  • サイズ 文庫判/ページ数 256p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167911812
  • NDC分類 910.26
  • Cコード C0195

出版社内容情報

秘められた恋、ストーカー的熱情、夫婦の愛憎――小林多喜二、三浦綾子、中島敦、原民喜、中城ふみ子、寺田寅彦ら十二の作家の物語。『狂うひと―「死の棘」の妻・島尾ミホ』著者が見た、激しすぎる作家たち。

恋の時間、結婚の時間、そして死までを深堀りし、作品に新たな光をあてる。(解説 永田和宏)





目次

1 小林多喜二――恋と闘争

一度も関係をもたぬまま、借金を抱えた酌婦から身請けし、「闇があるから光がある」と恋文を送るほど愛したタキ。だが彼女は、自分は多喜二にふさわしくないと求婚を拒み、表に出なかった。若くして非業の死を遂げた作家と「永遠の恋人」。



2 近松秋江――「情痴」の人

愛欲の愚かさを描き尽くし、「情痴作家」と呼ばれた最後の文士。「あたしなどは人間の屑だ」。現代ならストーカーと呼ばれかねない女性への恋着を描き、正宗白鳥とは私娼を奪いあう。晩年に失明した秋江の棺に入れられた女性の写真とは。



3 三浦綾子――「氷点」と夫婦のきずな

敗戦の価値観の転換で、虚無に捉えられた綾子。二人の男性と婚約破棄。結核、そして自死の企て――絶望の果てで見出した光は、幼馴染みのクリスチャンの男性だった。彼もまた結核に倒れるが、その不思議な縁で作家人生を支える夫と巡り合う。



4 中島敦――ぬくもりを求めて

「男一匹頭をさげてのお願ひでございます」。「山月記」の硬質な文体とはほど遠い必死さで、恋した女を譲ってくれと、その許婚に手紙を書いた。母の愛を知らずに育った男が求めたタカは、無償の愛を注いでくれる存在だった。三十三歳の死のその日まで。





5 原民喜――「死と愛と孤独」の自画像

終戦の前年に妻に先立たれ、広島で被爆。この世にひとり残されて、「夏の花」の作家の心は半ば死の側にあった。中央線で自死するまでの、荒涼とした晩年を癒したのは、無垢な少女との出会いだった。「キセキダ、キセキダネー。アノヒトニアッタノハ」。



6 鈴木しづ子――性と生のうたびと

「夏みかん酸つぱしいまさら純潔など」――美貌で知られ、性愛を大胆に歌い、「情痴俳人」と呼ばれて戦後を駆け抜けたしづ子。戦時下に待ち続けた恋人は帰らず、黒人兵の恋人もまた命を落とす。三三歳で消息を絶つまでの句に込めた真情。



7 梶井基次郎――夭折作家の恋

妻帯せず、恋人も持たず、女性との交情を小説に描くこともなく、「檸檬」など独特の作品世界を作り上げて早世した梶井は、宇野千代に烈しい情熱を抱き、当時の夫・尾崎士郎と?決闘?した。千代が二人の内実を永遠に明かさなかった理由は。



8 中条ふみ子――恋と死のうた

川端康成が序文を寄せ、中井英夫が編んだ歌集『乳房喪失』はセンセーションを巻き起こした。恋多き女として知られ、乳癌の死の床にあっても年下の男性を虜にしたふみ子。中井英夫との往復書簡には、短歌の美を追求する魂の共鳴があった。



9 寺田寅彦――三人の妻

ひとりで逝った最初の妻、夏子。十八と十四で結婚し、結核のため隔離されたまま娘を産んで亡くなった。四人の子をもうけた二人目の妻もまた急病で失う。寂しき人、寅彦は、毒舌でユニークな批評精神をもつ「悪妻」志んに見送られる。



10 八木重吉――素朴なこころ

詩人・八木重吉と、歌人・吉野秀雄、二人の夫に添い遂げた妻・登美子。切望されて十七歳で嫁いだ重吉は、無協会派のクリスチャンとしての信仰と生活のはざまで悩み、結核に倒れる。再婚した夫が詩人の遺稿を世に出す、数奇な運命。



11 宮柊二――戦場からの手紙

日中戦争で大陸に送られた一兵士の眼から、戦闘の最前線をつぶさに描き出した歌集『山西省』。戦地からおびただしい数の手紙と歌を書き送った女性は、わずか半年前に出会った英子だった。四年の間、一度も会えぬままに愛を育んでいく。



12 吉野せい――相克と和解

七六歳のデビュー作『洟をたらした神』で大宅賞受賞、「怖るべき老女」と激賞された。元文学少女の農婦は、詩と開墾にのみ情熱を傾けた夫との相克、愛児を死なせた苦しみの中で、自分は書かずにはいられない人間だと発見してゆく。

梯 久美子[カケハシ クミコ]
著・文・その他

内容説明

「恋の時間、結婚の時間の中では、美点も欠点も、可愛いところも困ったところも、崇高なところもずるいところも、余すところなくさらけだされてしまう。そこにそそられるのである」。文学を深掘りする著者が、12人の作家の生きた地に足を運んだ傑作ノンフィクション。裏事情を知ると、古典を再読したくなる!

目次

小林多喜二―恋と闘争
近松秋江―「情痴」の人
三浦綾子―「氷点」と夫婦のきずな
中島敦―ぬくもりを求めて
原民喜―「死と愛と孤独」の自画像
鈴木しづ子―性と生のうたびと
梶井基次郎―夭折作家の恋
中城ふみ子―恋と死のうた
寺田寅彦―三人の妻
八木重吉―素朴なこころ
宮柊二―戦場からの手紙
吉野せい―相剋と和解

著者等紹介

梯久美子[カケハシクミコ]
1961年、熊本県生まれ。北海道大学文学部卒業。2006年、『散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。同書は米、英、仏、伊など世界8か国で翻訳出版されている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ぼび

2
6/52020/11/13

tecchan

1
我が国の作家・詩人など12人の恋と死の物語。その恋が、作品にどのようにあらわれているのかを知ることができる。あまり知られていなかった作家達の姿を描くノンフィクション。2023/08/04

菊川ねこじ

1
作家と作品は全く切り離して考えるべきだという人もいるが少なくとも私は彼らが、いかなる時代を生き、誰を愛して何に傷つき、どのようにして死んでいったかを知りたい---まったく同感、というより激しく生き作品だけ残し散っていった人のいかに多いことだ。心がかき乱されるような内容。題名と副題(純愛とスキャンダルの文学史)が内容と合ってない。文庫化のとき変えられた?(恋と死と文学と)だがこれも説得力もパンチもない。。梯久美子氏の作品は今後も追ってみよう。 2022/07/17

コノヒト

1
人が恋愛に費やすエネルギーは、やはり大きい。しかもそこに人間としての美しさも醜さも、ひっくるめて現れてくるから、ひとりの作家につき、20頁ほどの少ない分量で描かれていながら、その中で彼ら作家の魅力が最大限に引き出されているのだと思う。なぜなら未読の作家の作品を悉く読みたくなったもの。女性の強かさ。2022/06/29

akio numazawa

1
多喜二の母はやはり良い人だな。吉野せいを今度読んでみよう。2021/01/11

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