出版社内容情報
「死にたか」と漏らす八十七歳の祖父の手助けを決意した健斗の意外な行動とは!? 新しい家族小説の誕生を告げた芥川賞受賞作。
羽田 圭介[ハダ ケイスケ]
著・文・その他
内容説明
「じいちゃんなんて早う死んだらよか」。ぼやく祖父の願いをかなえようと、孫の健斗はある計画を思いつく。自らの肉体を筋トレで鍛え上げ、転職のため面接に臨む日々。人生を再構築中の青年は、祖父との共生を通して次第に変化してゆく―。瑞々しさと可笑しみ漂う筆致で、老人の狡猾さも描き切った、第153回芥川賞受賞作。
著者等紹介
羽田圭介[ハダケイスケ]
1985年東京都生まれ。明治大学卒業。2003年「黒冷水」で第40回文藝賞受賞。08年「走ル」が第139回芥川賞候補、09年「ミート・ザ・ビート」が第142回芥川賞候補、14年「メタモルフォシス」が第151回芥川賞候補、15年「スクラップ・アンド・ビルド」で第153回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カピバラKS
159
老祖父を介護する若者の物語。認知症老母を同居介護している身として、介護問題を考えつつ読む🤔この物語の老祖父も我が家の老母も、常々「死にたい」旨を口にする。しかし、両名ともに内心では「まだまだ自儘に生きたい」と思っているようだ。尊厳死選択の難しさを想う😓また、親子介護は嫁姑介護より惨況になるという。被介護者が自儘を言い易いからだ。老母は介護サービスを介護職員等に気を使うから利用したくないと言うが、裏を返せば子供のカピバラKSには大して気を使っていないのだ。介護虐待の背景が垣間見える😮💨2023/12/20
ALATA
139
就活中の健斗は要介護老人の面倒を見ながら筋トレと宅建取得に励む日々。息苦しい生活の中で、祖父の終末期の切実?な挑戦に手助けは必要かと悩む。「早う迎えに来てほしか」・・・なんか悲しくなる。老人に席を譲る行為は足腰を弱らせることになるのではないか。利己的なメンタリティーはすごく歯がゆい。己の優しさを見せることはまだまだ経験不足と見た。★4※羽田さん初読み。ユーモアがあって好感が持てます。「寂しくなるねぇ」就職が決まった健斗に「じいちゃんのことは気にせんで頑張れ」には涙。2023/09/30
ゆのん
128
タイトルの『スクラップ』と『ビルド』が様々な箇所で形態を変えて出てくるところが面白い。老人=弱者というイメージはもはや昔のものだと思う。電車などで親切心を出し席を譲っても『年寄り扱い』と怒られる。いやいや、完全に年寄りで杖も持ってるじゃないですか。こんな経験をするとうかつに行動できない。見た目は弱そうに見えても本作の祖父のようにしたたかさも備えているのだとすればこちら側にもある程度の計算やしたたかさは必要なのかもしれない。2018/05/25
k5
82
ややこしい風に言うと、人間を機能の集合体として考える、という話かな、と思います。老いていく祖父と若いけど若さを持て余している孫を、その機能性の違いを意識しながら描いているのだと。で、単純に言うと、じいさん早く死なないかなあ、という話です。一緒に住む存在を、家族とかそういうのを一旦置いておいて、不快の源泉と見なすのは、最近の小説の流行りのようにも思いますが、オチがつけにくいので読んでる側も終わって戸惑います。「粉飾決算をした会社の子会社」という響きは好きでしたが。2020/08/29
佐島楓
82
痛烈な社会批評であり、青春小説である。祖父の世代が日本社会を壊し、また造り直し、今度は自分の体を老化により壊していく。孫の健斗の世代は、壊れていく社会の中で生きていくしかなく、刹那の快楽に身を浸す。この二人の間の差は何であろうか。健斗は祖父に未来の自分を見ているのは違いないが、同時に依存してもいるという、この関係性が秀逸だった。2018/05/16
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