出版社内容情報
戦後七十周年に下された指令は七十七年前の「事件」取材? やがて過去と現在がリンクし始め……。伝説の事件記者が挑む新境地。
内容説明
戦後70周年企画として、調査報道のプロに下されたミッションは、77年前に起きた「事件」取材。なぜ、この事件は強く否定され続けるのか?「知ろうとしないことは罪」と呟き、西へ東へ南京へ。いつしか「戦中の日本」と、「言論の自由」が揺らぐ「現在」がリンクし始める…。伝説の事件記者が挑む新境地。
目次
第1章 悪魔の証明
第2章 陣中日記
第3章 揚子江の惨劇
第4章 兵士たちの遺言
第5章 旅順へ
終章 長い旅の終着
著者等紹介
清水潔[シミズキヨシ]
1958年、東京都生れ。ジャーナリスト。日本テレビ報道局記者・解説委員。雑誌記者時代から事件・事故を中心に調査報道を展開。日本推理作家協会賞、新潮ドキュメント賞、日本民間放送連盟賞最優秀など受賞多数。本書で描かれている「南京事件」のドキュメンタリーで、ギャラクシー賞優秀賞、「放送人グランプリ」2016準グランプリ、平和・協同ジャーナリスト基金賞奨励賞などを受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gonta19
126
2017/12/27 ジュンク堂三宮駅前店にて購入。 2019/10/2〜10/5 丁寧な取材で定評のある清水氏が南京事件に挑んだ作品。難しい問題ではあるが、関係者の証言を掘り起こして真相らしきものに迫っていく迫真のルポ。 何を持って”大“虐殺とするか、が結局のところの問題か。一般人を殺害したのは間違いないんだろうし、それについては反省と謝罪が間違いなく必要だろうが、清水氏の取材でも結局のところ人数については触れられていない。2019/10/05
ゆいまある
108
「殺人犯はそこにいる」の清水さん。今年で南京大虐殺が起きてから82年目の冬が来た。暴走した日本軍はゲリラ兵の可能性もあるとし、膨大な数の民間人を虐殺。更に与える食料がないと言い多数の捕虜も虐殺。その事実を残された日本兵の日記から紐解き、中国で裏付け取材している。加害者である日本軍が食料が尽き、略奪しながら進んでいく様に胸が塞ぐ。他国の虐殺事例も挙げており、悪いのは民族ではない、馬鹿はどこにでもいると思わせられる。政治家暴走の引き金は報道規制だが、今の日本にどれ位言論の自由はあるのだろうと改めて考えた。2019/12/03
kinkin
96
本書にも書かれていたが、あったことを何故それほどまでに否定する人やメディアがいるのだろう、30万人もそんなにたくさんの人は虐殺されていない、事件そのものがなかった。そういう意見は一定数いるのだろう。当時兵隊として南京に行った人々の手帳や証言を調べるとあったことは確かだと思う。虐殺は虐殺であり、人数の問題でもなく、東京大空襲や原爆が虐殺は、間違いない。戦争というのは、それ自体が虐殺の塊だと思う。この事件のことを知っている人は加害者も被害者もそのことを思い出すのも辛い生涯だったと思った。調査報道、大切だ 2025/01/28
AICHAN
67
図書館本。昨年3月に予約してようやく手に取った。「南京事件」について何冊かの本を読んだ。虐殺(中国側資料では30万人)や強姦があったというものが多いが、当時の南京人口は20万人なのに30万人の虐殺があったというのはおかしい、だから「南京事件はなかった」と強引に論を展開する本もあった。極右翼「日本会議」やその関連の人々(自民党やアパホテル社長等)の主張と同じだ。本当のことが知りたくて、妙に気になったこの本を借りた。優れたルポだった。「南京事件」はやっぱりあった。この事実を日本人は等しく認めるべきだ。2018/07/02
nnpusnsn1945
55
筆者は日テレの記者であり、調査報道で山田支隊の南京事件(幕府山において機関銃で捕虜を処した。)を描いている。輸送船、万年筆、元になった日記など・・・。裏取りはかなり徹底している。番組放送後は筆者の家族の歴史を辿った。祖父が日清・日露戦争に参戦。父親は鉄道連隊に入営し、シベリア抑留を経験した。つまり戦争による加害者の孫にして被害者の息子であることが発覚したのである。(なお、日清戦争時の旅順でも南京事件と類似した騒動が発生し、当時海外メディアでとりあげられた。)南京事件関係の初学者向けとしても読みやすい。2023/08/17