出版社内容情報
釧路で書道教室を開く夏紀。認知症の母が言った謎の地名に導かれ、自らの出生の秘密を探る。しかしその先には、封印された過去が。思い出して、思い出して、忘れて行くこともある──
釧路で書道教室を営む夏紀は、軽い認知症を患った母がつぶやいた、聞き慣れない地名を
新聞の短歌の中に見つける。
父親を知らぬ自分の出生と関わりがあるのではと、短歌を投稿した元教師の徳一に会いに根室へ。ひとつの短歌に引き寄せられた二人の出会いが、オホーツクで封印された過去を蘇らせる……。
桜木ノワールの原点ともいうべき作品、ついに文庫化。
桜木 紫乃[サクラギ シノ]
内容説明
釧路で書道教室を営む夏紀は、認知症の母が呟いた、耳慣れない地名を新聞の短歌の中に見つける。父親を知らぬ自分の出生と関わりがあるのではと、短歌を投稿した元教師の徳一に会いに根室へ。歌に引き寄せられた二人の出会いが、オホーツクで封印された過去を蘇らせる…。桜木ノワールの原点ともいうべき作品、ついに文庫化。
著者等紹介
桜木紫乃[サクラギシノ]
1965年、北海道釧路市生まれ。裁判所職員を経て、2002年、「雪虫」で第82回オール讀物新人賞を受賞。07年に同作を収録した『氷平線』でデビュー。13年『ラブレス』(新潮社)で第19回島清恋愛文学賞を受賞し、同年『ホテルローヤル』(集英社)で第149回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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柊文庫本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
308
ミステリー仕立ての紫乃さん作品、夢中で読み終えた。道東の湿った空気感、風吹き抜ける断崖から臨むオホーツクの海(室蘭ベースの遊女モノを読んだところだったこともあり)にずっぽり浸ることができた。墨の匂いなど、五感にも訴えかけてくる作品。オホーツクの露と散った、佐々木彩子ちゃんが切ない。2017/11/11
さてさて
229
この作品では70年代のソ連による漁船拿捕という道東ならではの事象が起点に描かれていました。そして時代が下った後には桜木さんならではの北国の大自然が鮮やかに描写されていきます。そんな背景の前に描かれたのは二つの家族を巻き込んで展開するミステリーな物語。後半に向かってスピードを上げて解き明かされていくミステリーの数々、一方で読者の心に深く刻みつけられていく薄暗い雰囲気感がどこまでも後を引く物語。「風葬」というミステリアスな書名を冠したこの作品。これぞ”桜木紫乃ワールド!”を存分に堪能できる傑作だと思いました。2022/04/11
おしゃべりメガネ
189
およそ8年半ぶりの再読で正直、話をほとんど忘れていて、初めて読んだかのような感覚で読了でした。釧路と根室が舞台になっており、そちらでの生活が長かった自分としては桜木さんが綴る見事な情景描写にすっかりココロを奪われてしまいました。ココロに傷を負った教師が実家に帰り、父親と共に暮らしながら、不可解なコトに巻き込まれていきます。ミステリー調でありながら、しっかりと人間の再生をかいている作風はやはり流石でした。人それぞれ色んな事情を抱えながらも、しっかりと前を向き'幸せ'を掴もうとする生き方に勇気づけられました。2018/03/29
じいじ
135
全体に漂う重い空気感、紫乃さんの懐に包まれながらの読み心地は相変わらずいい。舞台は、潮の匂いがきつい流氷と漁港の街・根室。ここは、旧くは遊郭と歓楽に沸いた街だったそうだ。母から受け継いだ書道教室を営む娘の夏紀を軸に物語は展開する。記憶障害が出始めた母が漏らした「ルイカミサキ」の謎めいた一言がキーワードに―。母の出生の謎など、絡み合った糸が徐々に解きほどかれていきます…。桜木ミステリーの筆が冴えわたります。読み終えて、無性に根室「涙香岬〈ルイカミサキ〉」のヒンヤリとする海風を力いっぱい吸いたくなった。2017/08/06
ゴンゾウ@新潮部
124
久しぶりに桜木紫乃さんの世界に浸りました。道東の根室と釧路を舞台に書道家母娘の 過去をたどる物語。根室のロシアとの漁業を巡る闇取引など道東特有の闇も絡みます。全体的に救いが少ない展開だがラストは少し光が差してきた。2019/12/23