出版社内容情報
病気を治すことと同じく或いはそれ以上に大切な、人が安らかに逝くこと。「臨床宗教師」の必要性を唱えて死んだ医師、渾身の遺言。
この国の「看取る文化」を甦らせるために
病気を治すことと同じく或いはそれ以上に大切な、人が安らかに逝くこと。「臨床宗教師」の必要性を唱えて死んだ医師、渾身の遺言。
内容説明
治療が医師の使命。が、治らない患者はどうするのか。宮城県で緩和ケア医院をたちあげ、末期がん患者の訪問看護に注力した医師がいた。自宅療養しながら「お迎え」を体験し、安らかに逝く人々。病人とあの世を繋ぐ「臨床宗教師」育成の必要を医師は確信しつつ自らもがんで逝く。魂ふるえる医療現場からの提言。
目次
第1章 余命十カ月
第2章 抗がん剤は薬ではない
第3章 治らないがん患者のための医師に
第4章 家で死を迎えるということ
第5章 「お迎え」は死への道しるべ
第6章 大きな命の中の存在
第7章 死への準備
カール・ベッカー教授との対談 「日本人の魂はどこにいくのか」
著者等紹介
奥野修司[オクノシュウジ]
1948年大阪府生まれ。立命館大学卒業。78年から南米で日系移民調査。帰国後、フリー・ジャーナリストとして活動。『ナツコ 沖縄密貿易の女王』で講談社ノンフィクション賞(2005年)、大宅壮一ノンフィクション賞(2006年)をダブル受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
みちお
6
母の看取りに向けて、これから何が起きどう受け止めればよいのか何も分からない中で読んだ書。まさに死の闇に降りていく道標であり、自分自身の死生観も変えてくれた書だった。 "「お迎え」は、最期の時期を穏やかに過ごすために、神から与えられたギフトなんだと思う。 人間は生理的に、あの世に守られながら死ねるようになっているのかもしれない。" これほど救いになる言葉はないなと思う。2022/04/05
きょ
5
こんなすごいことしてた医師がいたんだ。もういないんだ。死生学には、たいへん興味がある。とはいえ、そんなもん、学問じゃなくて生き方、逝き方を己れでどう扱うべきか だろうとも思う。なんて突き放したら、死を怖れ哀しむ人の手助けなんて出来ない。寄り添いたい、でも自分でしっかりしてほしい。なんて思っていては、対人援助職ではない。私はどのように死に向かうのだろう。岡部先生のバイタリティー溢れる生き方、臨床で見出した緩和ケア、御自分が示した死出の旅だち、圧倒された。あちらへ行ったらお会いしたい人が、また増えた。2016/01/04
英
2
今じゃないけど、死ぬまでに、宗教や看取りに関わる活動をしてみたいと思った。日本人は無宗教というのには確かに違和感があって、極度の多神教なんじゃないかと思っている。お迎えやあの世への行き方について信じられるストーリーがないと、死への不安感が強い。医療に頼ると、本来なら意識が朦朧としていくのに脳機能が最後まで低下せずに死を迎えるから、最後まで不安と向き合うことになる。宗教がないと、医療以外に出来ることがないから頼りたくなる。残される家族も納得できるような看取りの儀式と在宅介護が実現できる制度が必要。2022/10/28
キオン☆
2
医学は日進月歩。けど、時があるんだよ。抗がんの治療は75歳がボーダーと。社会的影響力がある人はともかく、私なんぞ...nothing。看取り、逝く人を含めどういう文化を持って生きてきたかが、如実にでるときだろう。臨床宗教師。臨床でなくても、宗教は大事だと思う。誰もが通る道だし。いつお迎えがくるんだろう。先に逝った方々には見えているのだろうけど。後始末があるから、ガンで逝きたいな。事故類だけは困るよ。奥野氏すごい取材力だと思う。よい本だった。2018/06/25
Masaaki Inoue
2
ガン患者の在宅緩和ケアに取り組む医者が、自らガンになり亡くなるまでの心境を奥野さんが取材したノンフィクション。プロの医者だけに自らの病状、検査や抗ガン剤の功罪について、病院の問題点や在宅の可能性等、とにかく納得できる。「お迎え現象」(←亡くなったお爺ちゃんとかが迎えに来るヤツです)についての考察や「臨床宗教士」の必要性などは、ちょっと他に類を見ない内容。人は必ず死ぬのだから最後には「あの世への道しるべ」が必要になるはずなのに、今はそれが無いから皆苦しむ、との事。死ぬ間際にもう一度読むと思います。お勧め!2016/06/22




