出版社内容情報
ある事がきっかけで、ピアノの音を聴くと「香り」を感じるという「共感覚」を獲得した調律師、鳴瀬の喪失と再生を描く感動の物語。
仙台在住の著者が3.11を描く現代小説
ある出来事がきっかけでピアノの音を聴くと「香り」を感じるという「共感覚」を獲得した調律師、鳴瀬の喪失と再生を描く連作短編。
内容説明
交通事故で妻を亡くし、自身も大けがを負った結果、音を聴くと香りを感じるという共感覚「嗅聴」を得た鳴瀬玲司は、ピアノの調律師を生業としている。さまざまな問題を抱えたピアノ、あるいはその持ち主と日々接しつつ、いまだに妻を忘れられずにいた鳴瀬だったが、ある日、仕事で仙台に向かうことに―。
著者等紹介
熊谷達也[クマガイタツヤ]
1958年、宮城県仙台市生まれ。東京電機大学理工学部数理学科卒業。中学校教員、保険代理店業を経て、97年、「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞して作家デビュー。2000年、「漂泊の牙」で第19回新田次郎文学賞受賞。04年、「邂逅の森」で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんごろ
146
亡き妻を忘れられず、ちょっと特殊な能力を持つ調律師の話!様々な人のピアノを調律をするんですが、常に亡き妻が心の中にいるなんて、よっぽど妻を愛してるんだなと…えっ!俺はどうかって?もちろんウチの奧さん愛してますよ(^^)ただただ、様々な人の調律をして新しい恋でもして終わるのかなと思ったら、まさかの展開に一気に引きこまれました。ちょっとウルッとしましたね(^^)面白かったです!BGMに鈴木祥子『Hourglass』がいいかな(^^;)2016/09/18
相田うえお
98
★★★★☆音を聞くと色が見えたり香りを感じる人が本当にいるんですよ。そんな作品です。無駄話しまーす。当方ギター弾きなんですね。そんな関係で音つながりで本作品を読んだわけです。ある日、ギター弾いてたら、微かに臭いを感じたんです。これってもしかして当方にも音を五感で感じることが出来るようになったか?この臭いはくさいから、当方のギターがヘタだってことか?「ニャ〜」「ニャ〜」「ん?ごまちゃん!」(猫の名前)「わぁ!うんち!」ごまちゃんは今だにトイレでしてくれないんです。当方の音を感じる能力じゃなかったのかあ。2015/12/30
アッシュ姉
74
熊谷達也さん十冊目。ピアノの音を聴くと香りを感じるという共感覚を持つ調律師をめぐる連作短編。『オール讀物』への連載執筆中に東日本大震災が起こり、宮城県出身仙台在住の熊谷さんは作品のテーマ自体を大きく変容させたという。途中から物語の方向性が変わった唐突さは残るものの、震災そして作品へ真摯に向き合った著者の思いが読者の心に深く残ったのもたしかだ。2017/06/27
はつばあば
68
今迄と違う熊谷さんの作品。でもやっぱり以前と本質的には変わっていない。人の一生はいつも順調満帆ではないと。ピアニストだった繊細な神経を持つ鳴瀬は、色聴や嗅聴を亡き妻の思い出と共に、今は調律師として生活をしている。いや、生活をしているとは言えないな・・漂っているって表現がぴったりかも。そんな時、東北大震災に遭う。どんなことになっても、どんな目に遭っても地に足をつけて生きていかねば・・。鳴瀬と作家熊谷さんが震災後に再生を果たしたことに安堵する。2016/09/09
巨峰
59
東日本大震災をはさんで書かれた連作短編。主人公は共感覚のあるピアノ調律師。彼の共感覚はピアノの音がにおいとして感じるというもの。とても興味深く読んだのだが、作者が震災に遭遇したことにより、この短編集も転調してしまう。(乃南アサさんの一番長い日と同じですね)元のままだったらどんな展開になってただろうかと思ってしまう。2015/12/28