出版社内容情報
母親の思い出から三十年前の京都旅行、『吾妻鏡』領主、郵便配達人まで――自在に空間と時間を往来する、「私」を巡る五つの物語。
泉鏡花文学賞を受賞した傑作中篇集。
語り手の「私」が、自分の子供のころの母親の思い出を語りだす。と思いきや、突然思い出を断ち切るように、二十歳ごろのうらぶれた京都旅行の話が始まる。線路で泣いている仔犬を救おうとした話、田舎の郵便局で働く巨漢の元力士、千年前の源平時代の領主の話、裸の大将・山下清の話、そして行き着くのは百年前にハワイに移民した日本人の話――自在に空間と時間を往来する、「私」を巡る五つの物語。
タイトルになった〈往古来今〉とは、「綿々と続く時間の流れ。また、昔から今まで」を表す中国の四字熟語。時空がなだらかに転調していくこれまでのスタイルを踏襲しながらも、新しい挑戦に挑んだ意欲作である。
解説・金井美恵子
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
苺畑序音
11
要約は無意味かな。2016/05/09
ist
11
イマジネーションの枯れた村上春樹みたい。よくわからないし、かみ砕けそうなとっかかりもなく、これを受け入れ、往古来今の人物の思索、土地に遺されている記憶を受け止める、のが楽しみ方なのかな。2015/12/02
nyanlay
11
短編連作という分類になるのでしょうか?主人公が存在しない、と言うか語り手が誰なのか、文章としては淡々と進んでいるのですが、自分が何を読んでいるのかよく判らなくなりました。この作品は私にはまだ早いということなんでしょうかね? 2015/11/07
sk
5
語りのテクスチュアはそのままに、語りの平面をダイナミックに切り替えてそこに不思議な飛躍を作るのが面白い。パラダイムがシフトするかのようにテクストの時空間の平面がシフトしていく快楽。磯崎はその手法を自家薬籠中の物としている。2015/12/27
keiniku
4
短編集か、と思って読み勧めていたら、連作と気付いた。わたし、として語られる人が体験している事から全く違う人や、時代に変わり、またわたしの話になる。しかしその「わたし」も同じような体験で繋がる別人なのかも知れない。最後の、「恩寵」にはわたしはいないが、どこにでも「わたし」である人は存在し、過去を振り返ったり、後悔したり、センチメンタルな気持ちになったりするのだろう。2022/01/22