出版社内容情報
渇いた心が信長を天下統一へと駆り立てた。「下天は夢か」から四半世紀を経て、より深い人間解釈によって描かれる津本文学の集大成。
内容説明
なぜ、織田信長は危険だと承知しながら本能寺へ無防備に赴いたのか?己の運を試し死の危うさに遊ぶ信長の暗い情念は、天下統一を目前にして深まっていった。浅井朝倉攻め、延暦寺焼き討ち、一向一揆への凄惨な弾圧…。既存の権威を歯牙にもかけない男の、内底に秘めた渇いた心を描く、津本陽の傑作長篇小説。
著者等紹介
津本陽[ツモトヨウ]
昭和4(1929)年、和歌山市に生れる。東北大学法学部卒業。昭和53年『深重の海』より第79回直木賞受賞。平成7年『夢のまた夢』で第29回吉川英治文学賞を受賞。平成15年旭日小綬章を受賞。平成17年第53回菊池寛賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ブラックジャケット
13
戦国期の信長包囲網は歴史的意味合いが重い。いわゆる守旧派の命がけの反撃が見える。失敗すれば信長にすりつぶされる。光と影で、日が当たらなくなれば、それは死。鉄砲の前に屍を重ねる時代遅れの戦法は、明治・昭和まで続く。日本人はいち早く鉄砲を国産化したが、戦法は屍を乗り越えるしか発想はない。戦国期の鉄砲の意義を著者は重く見ている。また、浅井長政の首級の扱いなど、世の中に浸透した司馬史観の更新を試みる。信長の潜在意識など、新機軸を見せながら、華麗に戦国絵巻を描く。題名は地味な影絵を採用したが、なかなかの重量級。 2020/11/10
春風
8
幼少期に母である土田御前に疎まれた事に端を発し、極端に猜疑心抱き、危険を犯す事でしか生を実感できなくなったという設定は、最後の本能寺の変まで通底。信長という人間を大変丁寧に追って描写しており、宗教集団の弾圧などの他の作品では割愛されがちな出来事も詳説されており、信長を考察する上での新たな視点を与えてくれる。津本氏は、本作で信長作品3作品目であり、信長愛の並々ならぬ故か、ラストは美学に溢れた最期だった。又、その最期が自分が信長に、そして歴史に興味を抱いた契機ともなったあの説。万感胸に迫る。2015/08/16
m.m
5
パラレルワールドがあるならば、本能寺で信長が生き残ったその後の歴史がものすごく気になるのは私だけだろうか…(/ω\)2015/09/28
キアヌ安倍
4
ヒステリックなイメージがある信長ですが、幼少期の母との関係から何故そのような人格になったのか、精神の内面に踏み込んで描かれています。新鮮な印象を受けました。2015/08/11