出版社内容情報
どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。
直木賞受賞! 私たちの心の奥底を静かに覗く傑作集
どこにでもある町に住む、盗癖のあるよそ者の女、婚期を逃した女の焦り、育児に悩む若い母親……彼女たちの疲れた心を待つ落とし穴。
内容説明
どうして私にはこんな男しか寄ってこないのだろう?放火現場で再会したのは合コンで知り合った冴えない男。彼は私と再会するために火を?(「石蕗南地区の放火」)。夢ばかり追う恋人に心をすり減らす女性教師を待つ破滅(「芹葉大学の夢と殺人」)他、地方の町でささやかな夢を見る女たちの暗転を描き絶賛を浴びた直木賞受賞作。
著者等紹介
辻村深月[ツジムラミズキ]
1980年山梨県生まれ。2004年『冷たい校舎の時は止まる』で第31回メフィスト賞を受賞しデビュー。11年『ツナグ』で第32回吉川英治文学新人賞、12年『鍵のない夢を見る』で第147回直木三十五賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 4件/全4件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
630
辻村さんのはそれなりに数は読んでいたつもりだったが、出世作のこちらがまだだった。全編に通じるテーマは、地方の閉塞感が生んでしまった犯罪がらみの短編集。どの女性主人公も追い詰められておりひたすらもの哀しい。『君本家の誘拐』、これは頼る者のいない中でワンオペ育児したことある女性には身のつまされる作品。「あんなに欲しかった赤ちゃんなのに、どうして…」を感じなかったヒトはいないだろう。短編集だったのが意外だったが、辻村さんビギナーにも読みやすい仕上がりだと思う。2023/03/25
さてさて
588
軽いものから重いものまで罪を犯そうとする人達のそこに至るまでの過程を切り取った五つの短編が収録されたこの作品。こうやって人は堕ちていく…と感じる〈芹葉大学の夢と殺人〉、のんびりとした地方都市の中で本当の恐怖はどこにあるのだろうと感じる〈石蕗南地区の放火〉、そして、犯罪でもなんでもなく、子育てに悩むお母さん達の日常の一コマを目の錯覚的に描く〈君本家の誘拐〉等、その内容は多彩です。ふり幅の広い女目線の数々、プライドの高さとその陰に蠢くドロドロ、ねっとりとした執念と怨念の世界。人の怖さをそこに感じた作品でした。2022/04/17
nanako
512
女性の心の内面に触れた作品。この作中の女性たちの心境、わかるようなわからないような・・・同情?共感?難しいです。2017/08/27
せ~や
446
短編集。どの短編もそれぞれに味がある。僕は男性なので、女性の世界をほんの少し、覗いてみた感じで面白かったし、出てくる男性に対しても、わかるな~って思ったり。女性側から見たら、こんな風に思われてるのかなと考えてしまう(笑)あとがきの、辻村さんと林さんの対談も、本作のもっと理解させてくれる感じ。どこにでもいそうな人たちが丁寧に描かれていて、共感出来る事がたくさんで、小説なのに近くにある感じの日常。女性が楽しめる事はもちろん、男性の方も楽しめる一冊でした。☆42018/10/01
yoshida
394
辻村深月さんの短編5編。リアルな質感とじっとりとした空気感に、読んでいて心がヒリヒリする。辻村深月さんは初期の作品にあった幻想や推理から、リアリズム溢れる作品へと到達した。どの短編も読ませる。哀しいくらい残念な男女が登場する。盗癖、叶わぬ夢を見続け現実を直視出来ない男、DVをする男。あたかも我々の身近にいて、呼吸をするように描かれる。子を持つ女性ならば、最終章の良枝への共感性は大きいのではなかろうか。読後感も多様である。あまりの人間臭さと感情の動きに魅了され、私は頁を捲る手を止められなかった。非常な力作。2017/12/17




