出版社内容情報
アイヌの血を引くジンは、南極海に向かう大型船に密航する。仕事を得て、氷山曳航計画を担うこの船に乗船し続ける彼を待つものは…。
新しい海洋冒険小説の誕生!
アイヌの血を引くジンは、南極海に向かう大型船に密航する。仕事を得て、氷山曳航計画を担うこの船に乗船し続ける彼を待つものは…。
内容説明
アイヌの血を引くジンは、南極海での氷山曳航計画を担う船シンディバード号に密航し、露見するもなんとか滞在を認められた。ジンは厨房で働く一方、船内新聞の記者として乗船者たちを取材して親交を深めていくが、やがてプロジェクトを妨害する「敵」の存在が浮かび上がる―。21世紀の新しい海洋冒険小説。
著者等紹介
池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年、北海道生まれ。埼玉大学理工学部中退。翻訳家、詩人として執筆活動を始める。87年「スティル・ライフ」で中央公論新人賞、88年同作で芥川賞を受賞。93年『母なる自然のおっぱい』で読売文学賞、『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、2000年『花を運ぶ妹』で毎日出版文化賞、01年『すばらしい新世界』で芸術選奨(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みっちゃんondrums
14
すがすがしい近未来青春小説だった。アイヌの血をひく日本人で18歳のジンは、留学先のニュージーランドから、南極行の船に密航する。船の使命は、南極の氷山をオーストラリアまで曳いてくること。船の中は、国際色豊かな、まるでユートピア、真の悪人は一人も出てこない。「敵」を推測させる存在もあるが、とても理性的で理論的な魅力を持ち、悪ではない。人類の未来、幸福、信仰、大人になるって?など、いろいろ考えさせられる。静かで大きな物語だと思う。2014/11/06
ネムル
13
池澤夏樹の長編を初めて読んだ。南極の巨大氷山を船で牽引するという海洋冒険小説で、そのプロジェクトに関わる多くの研究が描かれる近未来科学小説で、教養小説で、科学と工学からなる詩のよう。プロジェクトに敵対する組織が出てきても勧善懲悪になるわけでなく、オチが説教臭くならないよう節度を保っている。その澄んで健康的な香りが気に入った。2014/09/29
P_CAPT
8
スリリングな冒険物語ではなかったが、引き込まれた。人類の為に南極の氷山を曳航し利用しようとするミッションを舞台に、密航者で主人公の若者ジンの目と言葉を通して語られていく。ミッションはアイシストの妨害を受けながら勝負は「五分五分」の結果に導かれる。 結果「何が分かったわけでもなく、実は分からないことが増える一方でした」「未来というのはいつだって混乱の向こう側にあるものでしょうから」混乱を受け入れ感謝する彼の精神が彼の幸運なこの冒険を生んだのだろう。装丁の絵が物語のテーマを上手く物語っていますね。2014/10/31
sabosashi
7
地球には今後、足りなくなる資源が少なからずリストアップされている。 そのひとつが、水。 水なんて空からいくらでも降ってくるように思えるが、消費される水も様々な理由で膨大なので追いつかない。 かつは、水売買の民有化なんて営利な企ても飛び出してくる。 そんななか、では南極の氷山に眼をつけよう、ということで、南極からオーストラリアまで氷山を曳航してくるプロジェクトが生まれる。 この半ば秘密裏のプロジェクト船に、若いニホン人の密航者が忍び込む。 2018/04/16
みほ
6
なんだかぼんやり。夢中にはなれなかった。アイヌのこともアボリジニのこともムスリムや『アイシスト』のことも。せっかく多国籍なのに魅力あるキャラクターもいなくて、長さだけが気になった。もう少し絞れたらよかったのに。2014/09/07