出版社内容情報
賞味期限切れの片思いと好きでもない現実の彼氏。どっちもほしい、どっちも欲しくない。迷いながら、ぶつかりながら、不器用に進んでいく。
内容説明
江藤良香、26歳。中学時代の同級生への片思い以外恋愛経験ナシ。おたく期が長かったせいで現実世界にうまく順応できないヨシカだったが、熱烈に愛してくる彼が出現!理想と現実のはざまで揺れ動くヨシカは時に悩み、時に暴走しながら現実の扉を開けてゆく。妄想力爆発のキュートな恋愛小説が待望の文庫化。
著者等紹介
綿矢りさ[ワタヤリサ]
1984年京都府生まれ。早稲田大学教育学部卒業。2001年『インストール』で第38回文藝賞を受賞しデビュー。2004年『蹴りたい背中』で第130回芥川賞を受賞。2012年『かわいそうだね?』で第6回大江健三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
713
語りが女性の独白体をとっているためだろうか、太宰の『女生徒』との相通性を感じる。もちろん、『女生徒』では30歳の太宰が14歳の女生徒に仮託したのに対して、こちらは作者自身と同じ26歳の、オフィスの経理課で働く女性に仮託しての語りだから、その階梯も大いに違うのだけれども。また、太宰の方がいい意味で観念的であるのに比して、こちらは体臭や身体の厚みを持った、これもいい意味で皮膚感覚的だ。霧島と結婚して、はたしてヨシカは後悔しないのだろうか。かといって、イチは恋人としては振り向いてはくれないだろう。悩みは深い。2013/01/12
zero1
460
妄想女に共感?リズムでキレを見せようとする綿矢。二人の彼氏がいる26歳の痛いヒロインのヨシカ。何が痛いかといえば、妄想で「イチ」と呼んでいる彼には想いを伝えてない。つまり「イチ」は彼氏ではなく、会っても絶滅動物の話をしてしまう。せっかく他人になりすまして同窓会まで開いたのに。彼女には体育会系の「ニ」という同僚が言い寄ってくる。そして付き合うことに。もし自分が二軍なら嫌だ。男性経験について同僚が話してしまう場面は女性の視点。女性読者から見てこの作品はどうなんだろう?終盤の行動は常軌を逸している。2019/03/13
ミカママ
374
ふたりの恋人(実はひとりは片想い)のあいだで揺れるヨシカを見て、まるで自分のよう...と思う女性は多いのでは。好きではない方の恋人を、冷静に分析する彼女の感性に吹きまくり。喪った恋の大きさは、喪ってから初めて気づくもの。そして初恋の彼には再会したらダメですね。夢は夢のままがいい。2016/10/31
青乃108号
361
イチとニの2人の男のどちらを選ぶかで葛藤する女性の物語。で、合ってますかね。本当はイチが本命なんだけど、ニに告白されて煮え切らない態度をとり続けていたら、親友だと思ってた女友達にこっそり打ち明けた秘密の話を二が知ってて、そんで激怒。会社なんかやめたるわい、と泣きながら親に電話するも男親から「おまえは辛抱がたらん」かなんか言われて、結局誰かにすがりたくて、二を選ぶ彼女。イチなんて勝手にふるえてろって。それでええんか。後悔はないのんか。その後が心配になったりもするけど、自分で選んだ道だからと父親目線で考える。2024/12/18
さてさて
360
二人の男性の間で揺れ動く女性の微妙な感情の動きを執拗に描いていく綿矢さん。初恋の人と結婚に至る確率は1%程度という現実は、”わずか1%”と感じる一方で”1%もあるのか”とも取れる数字だとも言えます。そんな『初恋の人をいまだに想っている自分が好きだった』と感情を昂ぶらせる主人公・良香が『自分の直感だけを信じず、相手の直感を信じるのも大切かもしれない』と冷静な感情を身につけて、一つづつ大人になっていく物語。”綿矢さんワールド”全開なその物語に、綿矢さんの作品を読む喜びを再認識させてくれた、そんな作品でした。2020/11/07