出版社内容情報
朝日歌壇に忽然と現われ、多くの共感を読者に残して消えた〈ホームレス〉の投稿歌人、公田耕一。その姿を求めさまよい歩いた記録。
表現することのできる人は、幸せだ――
朝日歌壇に忽然と現われ、多くの共感を読者に残して消えた〈ホームレス〉の投稿歌人、公田耕一。その姿を求めさまよい歩いた記録。
内容説明
“ホームレス”を名乗るその男・公田耕一は、朝日新聞の投稿歌壇に現われるや、大反響を巻き起こした。しかし誰との接触も拒否したまま、ある日忽然と消えた。いったい彼はどんな人間だったのか?実像を求めて横浜のドヤ街をさまよいながら、表現することの大切さへと辿りつく感動の異色ノンフィクション。
目次
第1章 まるで写楽のように
第2章 ドヤ街の人群れのなかを
第3章 「公田です」と名乗った電話
第4章 もうひとりの「消えた歌人」
第5章 奇縁の邂逅
第6章 獄中歌人・郷隼人からの手紙
人それぞれの「公田耕一」
著者等紹介
三山喬[ミヤマタカシ]
1961年神奈川県生まれ。東京大学経済学部卒業。新聞記者として13年間勤めた朝日新聞を98年に退社、ペルーに移住。南米在住のジャーナリストとして活躍後、2007年に日本に帰国。以後も旺盛な取材・執筆活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
鉄之助
272
平成の終わりに突然現れ「ホームレス作家」と言われた赤松利市。その10年前の2008年、朝日歌壇に彗星のように登場した”ホームレス歌人”がいた。この事実を初めて知り、一気読み。朝日新聞に28首掲載され、たった9ヶ月で姿を消した公田耕一(くでん・こういち)の姿を追って様々な人にインタビューを試みる。結果、公田本人は見つからなかったが、その過程で、その他の人含め「絶望的な状況下に置かれた人の”生きる力”」が十分伝わってきた。アメリカで終身刑を受け、獄中から、公田に向けて短歌を詠んでいた郷隼人の手紙が、心を打った2021/05/02
あじ
42
2008年12月、朝日歌壇紙上にホームレス歌人現わる。その後9ヶ月に渡り入選を繰り返すも、前触れなく消息を絶った─。衆目を集めた一連の出来事を取材したノンフィクション。ホームレス歌人の姿を探し求める一方で、自身の経済地盤を憂う著者が見え隠れする。建前は歌人の捜索だが、いつしかそれはホームレスの現状を伝えるルポルタージュの熱を帯びてくる。★3/5 副題を掲げた方が読者に親切だ。2018/05/28
ヨリヨリ
39
「表現できる人は幸せ」…何の能も持ち合わせない私は、読書メーターでつぶやくとしよう(^^)2014/04/08
tomi
38
朝日新聞の投稿歌壇に彗星のように現れて、注目を浴びるさなかに消息を絶ったホームレスを名乗る「公田耕一」の足跡を追ったルポ。元記者だが生活に行き詰まりを感じている著者は彼に自らを重ね合わせ、取材をしながらも本当に探し当てるべきなのか葛藤する。実際正体を隠して生きている彼にとっては迷惑この上ない事だろう。横浜・寿町のドヤ街で出会ったホームレスの意外過ぎる経歴には驚く。誰がどんな経緯でホームレスになるかなどわからない。自分も決して他人事ではないという思いを抱えながら読み終えた。2016/03/19
jima
25
FMヨコハマ「北村浩子のbooks A to Z」で紹介され、読んで見たいと思っていた。ノンフィクション。2008年暮れ、朝日歌壇に彗星のように現れた公田耕一。住所欄は(ホームレス)。その歌から、横浜市の寿町とわかる。9ヶ月で朝日歌壇から姿を消すが、彼の残した影響は大きい。今年1月の朝日歌壇を読んでも、アメリカで終身刑の郷隼人の獄中からの投稿や住所欄が(ホームレス)の作者の短歌が掲載されていた。「表現するという行為には、計り知れない力があるということを知らされた。」まさにその通りだと思った。2014/02/03