出版社内容情報
人が降ることで有名で、誰もがみんな知っている町、ファウルズ。そんな町に送られてきたレスキュー・チーム=町の英雄たちの物語。
内容説明
ほぼ一年に一度、空から人が降ってくる町、ファウルズ。単調で退屈な、この小さな町に流れ着き、ユニフォームとバットを身につけレスキュー・チームの一員となった男の物語。奇想天外にして自由自在、文學界新人賞受賞の表題作に、知の迷宮をさまようメタフィクション小説「つぎの著者につづく」を併録。
著者等紹介
円城塔[エンジョウトウ]
1972年北海道札幌市生まれ。東北大学理学部物理学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。2007年、「オブ・ザ・ベースボール」で第104回文學界新人賞受賞。2010年、『烏有此譚』で第32回野間文芸新人賞受賞。2011年、第3回早稲田大学坪内逍遙大賞奨励賞受賞。2012年、「道化師の蝶」で第146回芥川賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
222
円城塔の初期作品2篇を収録。表題作は第104回(2007年)文学界新人賞を受賞。この作品は、およそ感傷や情調、あるいは通常の意味での小説の構成からは程遠い。そもそも、タイトルから想像するのは、当然ベースボールを巡る物語だが、実は必ずしもそういうわけでもない。まんざら無関係でもないのだが。小説から喜怒哀楽といった感情や、説明などの夾雑物をすべて取り払ったところに自立する小説。いわば、小説の徹底した抽象化を試みたのがこの作品ということになるだろう。もう1篇は、これまた別の意味で難解な「つぎの著者につづく」。2014/05/30
新地学@児童書病発動中
121
難解で実験的な2つの中編。「オブ・ザ・ベースボール」は人が降ってくる町の話。その設定は面白いが、どういう意味がこめられているのかよく分からない。それを気にしないで読めば、奇想天外な物語を楽しめる。叙情性のない乾いた文章が印象的だった。「つぎの著者につづく」はさらに難しい内容で、架空の作家の紹介から書物の迷路に誘い込まれる。本の世界は一冊で完結することはない。一冊読めば、次を読みたくなる。本を書いた著者も他の著者から影響を受けている。このように活字の世界の豊かさを表現した物語のような気がした。2018/05/22
中玉ケビン砂糖
83
、「手札にエースが四枚。誰だってこれは負けないと思う。同じカードが四枚、しかもエースで回ってきて負けるゲームがあれば教えてほしい。俺は知らない。トランプではなく麻雀だろうが勝てる気がする。誰だってそう思うだろう。それでも不足だと云う向きにはもう一人の登場人物を紹介したい。」書き出しがうますぎる。ユーモア小説かと思いきや次の作品「つぎの著者につづく」でラファティをパロっていることから間違いなくSF。第一作だから芥川賞をあげる気持ちが渋るのは分かるが、どうせこれから第一線で活躍するであろう作家なのだから、2015/01/20
とら
68
物凄く読みたかった円城塔さん初読みです!本当に読みたかった!難解という噂は本当で、二作目の「つぎの著者につづく」なんてもうわけがわからないですw脳味噌フル回転させました。でも追いつけなかったみたいですこの世界観には。理解することが出来ればめちゃくちゃ面白いんだろうけれど。それは何故か。そう「オブ・ザ・ベースボール」はめちゃくちゃ面白かったから言えるのです!でもこれで円城塔入門編らしい。理解しがたい時もあるけど何だかこの不思議な世界観にもっと浸かりたいという思いが強いので、他の作品も読もうかなあと思います♪2012/07/25
kishikan
57
円城さんの小説としてのデビュー作とのこと。そうか!既にこの頃から、難解な文章スタイルが持ち味だったのね。さて、円城小説の僕なりの楽しみ方をご披露しよう。例えて言えば、抽象画を鑑賞するのと同じように、大局的な見方(受け止め方)をした方が、物語に入り込めずに苦しむことなく読めるんですよね。少なくとも円城さんの文章は、作法という意味ではアバンギャルドではなく、難解な用語が多い、語彙になじみがないものが多い、というのが難解さの原因なのですから。オブ・ザ・ベースボール他1篇によるこの本。何を貴方は感じるでしょうか。2012/08/03