内容説明
染み抜き屋のつるのもとに、今日もわけありの染みが舞い込んでくる。様々な染みに宿る人生と向き合うつる。たまの息抜きは、長屋の住人たちが通う「ちぎり屋」の暖簾をくぐること。明治から大正に移り変わる北の街を舞台に、消せない過去を抱えた人々が織りなす人間模様。心に染み入る連作短篇全五篇。
著者等紹介
蜂谷涼[ハチヤリョウ]
1961年、小樽市生まれ。90年、「銀の針」で読売ヒューマン・ドキュメンタリー大賞カネボウスペシャル佳作受賞。地元北海道を中心にテレビ、ラジオ出演や講演などの多方面で活躍しながら、執筆活動を行なっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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じいじ
63
蜂谷涼は、宇江佐真理、桜木紫乃とともに北海道を拠点に活躍する女流作家三人衆の一人。知名度では二人に譲るとして、「雪えくぼ」「へび女房」「はだか嫁」など幾多の秀作を描いている。故児玉清氏が自著で蜂谷さんの小説を絶賛しているのも頷ける。今作は、日露戦争、ポーツマス条約締結後の小樽を舞台にした物語。主人公は独り身で染み抜き屋を営む女つる。此処に登場する女性は内に秘めた力強さをもっているのが印象的だ。さすが港町だ、旨そうな酒の肴が沢山出てくる。紹介する字数がないのが残念。時代は違えども小樽を訪ねてみたくなった。2015/11/03
どら母 学校図書館を考える
3
明治の小樽が舞台で、時系列通りでない話の展開が最初は読みにくかったが、面白かった。2015/01/15
ts0818
2
初読みの作家さん。宇江佐真理さんが解説を書いていて、手に取ってみた。連作短編で、読み始めてみて、まぁまぁかなぁ、と思っていたんだけど、話が進むにつれて、どんどん面白くなっていく感じ。幕末~明治の激動の中で、未開の地であった蝦夷地(後に北海道となる)を開拓するために、死に物狂いで取り組む人間がいる一方、利権を貪る輩もおるなど、いつの時代も、人は変わらないですかね。登場人物のみんな悩みを抱えているんだけど、物語の後半で主人公のつるの生い立ちや過去が語られて、一番苦しい思いをしてきたのは彼女な気が。面白いです。2019/09/01
namadjp
1
全てを捨ててでも添い遂げたいという一世一代の覚悟、それすらも砕いてしまう血の力。愛する人に覚悟を突きつけられる側、突きつける側となる異なるエピソードでの2人の描写があるがどちらも見ていて胸がはりさけそうになる。北海道の歴史を知っている人はさらに惹きこまれるのではないでしょうか。2010/04/20
長老みさわ/dutch
1
北の大地、明治期の小樽を舞台にした連作短編集。北海道開拓の歴史が人情小説として、開拓小説として見事!2008/12/23
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- 和書
- 東京の下町 文春文庫