文春文庫
被爆のマリア

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  • サイズ 文庫判/ページ数 243p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784167753900
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

ようやく結婚が決まった38歳の私に父が提案したのは、結婚式のキャンドルサービスに「原爆の火」を使うことだった。戦後60年を経てなお日本人の心を重く揺さぶる闇を被爆者ではない4つの視点から見つめ、「実在しない片仮名のヒロシマ」ではなく「正真正銘の広島」にたどり着こうとする、著者渾身の問題作。

著者等紹介

田口ランディ[タグチランディ]
1959年、東京生まれ。2000年に長篇小説「コンセント」を発表、本格的な作家活動をはじめる。人間の心の問題をテーマにフィクション、ノンフィクションを往還する幅広い執筆活動を展開。2001年、「できればムカつかずに生きたい」で第一回婦人公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

375
田口ランディは初読。本書には表題作を含めて4つの短篇を収録。表題作のマリアは長崎のものだが(小説の舞台は東京)他の3篇は被爆地としての広島が描かれる。短篇集全体としては"被爆"が共通テーマである。小説としての完成度は「被爆のマリア」が最も高いが、タイトルとは裏腹に"被爆"との直接的な関連を持たない。内容的にはどこにも救いのない、しかし一途な信仰(対象は被爆マリア像)だけがある小説。「永遠の火」は、ややコミカルな要素を含むが、他の2篇はシリアスに被爆地である現代の広島に向き合いつつ、そこに生じる齟齬を描く。2020/11/02

Willie the Wildcat

77
異なる視点で再考する”傷跡”。象徴が、火/水/岩(磐座)/偶像。過去から現代への時間の経過と、伴う変化。世代間、理想と現実、手段と目的、そして自他という4つの対照性。共通点は、理由を求めた苦悩の末、辿り着いた自然体。印象的なのが『イワガミ』。1人の被爆者の投げた疑問。好奇心?平和?踏まえて鎮魂で〆。『永遠の火』の解を、垣間見ることができた気がする。一方、『時の川』と『被爆のマリア』の自他は、実像と偶像の差異と、「現在」との向き合い方の差異。前者の直球に対する後者の変化球という感。”生きがたい”、嫌な響き。2021/05/24

扉のこちら側

56
初読。図書館でタイトルに撃たれたように借りてきて、開いてみるとハッとさせられる言葉たちが。私にとってのやるせない日の記憶も、よみがえる。2013/06/24

まさきち

38
なんとなくとらえどころのないような、でも自分の中にもある痛いところを突かれたような不思議なストーリー達。その感じがやはり田口ランディさんらしさなのかなとなんだか納得した一冊です。2014/02/04

Mina

31
'原爆の火'を結婚式のキャンドルサービスに使うと言う父親、反対する娘の物語『永遠の火』他3編の原爆小説。主人公達は何らかの形で原爆に触れていくことになる。原爆、戦争はあってはならないと理解してはいるが、どう受け止めたらいいのか、どう向き合っていけばいいのか、何ができるのか…。戦争を知らない世代の登場人物達の葛藤に 自分も思い当たる部分があり、ハッとさせられました。戦争体験者は減り続けています。'原爆の火'が『心』の中からも消えることのないよう、永遠に灯し続けていけることを切に願います。 ―終戦記念日―2014/08/15

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