内容説明
東シナ海に浮かぶ伊栗島に駐屯する自衛隊の基地で、訓練中に小銃が紛失した。前代未聞の大事件を秘密裡に解決する任務を負い、防衛部調査班の朝香二尉とパートナーの野上三曹が派遣される。通信回線というむき出しの「神経」を、限られた人員で守り続ける隊員達の日常。閉鎖的な島に潜む真犯人、そして真実はどこに。
著者等紹介
古処誠二[コドコロセイジ]
2005年『七月七日』、06年『遮断』、08年『敵影』が直木賞候補となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かっぱ
31
【図書館】朝香二尉と野上三曹コンビによる自衛隊内ミステリーシリーズ第二弾。前作同様に登場人物の階級でどちらが偉い人なのかがよく分からない。佐渡二佐がいちばん偉くて、長谷部一士が一番下。それ以外は分かりません。カフェイン中毒で粘土で怪獣を作るのが趣味の朝香二尉の推理が冴える。消えた小銃は何処へ。そして何のために消え去ったのか。東シナ海の伊栗島の基地は一見、のどかなようでいてその実は。自衛隊員の身についた物品愛護の精神から銃を粗末に扱うなど考えられないことだが。島民が見たという不審な人影は外国の工作員なのか。2018/08/17
ゆう
25
★★★★★ 朝香二尉と野上三曹のコンビが謎を解く、人が死なないミステリの2作目。今回は、航空自衛隊の無線基地を置く小さな島で起きた64式小銃の紛失事件だ。密室モノとも言える飛行場すらない島の、さらに部外者が入れない基地で、厳しい監視下の実弾射撃訓練中に小銃が消えるという恐ろしい不祥事。専門用語が多いので人にはあまりオススメできないけど、いろんな意味で深い作品だと思う。事件のトリックよりも動機と背景に、読後は放心してしまった。そしてキャラ萌えも♪ またこのシリーズで書いて欲しいなぁ。切実に。2016/06/07
HoneyBear
21
古処氏の「接近」や「七月七日」はずしりと重く深く感銘を受けたのだが、この小説はもっと軽いタッチのミステリーだった。登場人物を忘れがちで読むのに時間がかかった。重い話になるだろうと身構えていたためか、少し拍子抜けしてしまった。小説のメッセージを十分に読み取れていないのかな。2017/12/12
harukawani
17
お。これまた面白い。自衛隊を舞台にしたミステリー、朝香・野上シリーズの第2弾。前作の『アンノウン』は「盗聴器がしかけられたのはなぜ?誰が?どのように?」という話だったが、今作は「小銃が消えたのはなぜ?誰が?どのように?」という話。なかなか地味だけど、全然内容は地味じゃない。自衛隊という特殊な組織の中でもさらに特殊な、離島の分屯基地が舞台。職務に忠実な自衛官しかいない基地で、なぜ前代未聞の事態に陥ったか…。自衛隊の存在意義から先の大戦までをも物語に内包した力作だった。細部まで隙のないリアリティが素晴らしい。2015/12/20
マッちゃま
16
「面白くないのに実に面白い」それが本書の感想。魅力溢れる探偵役、謎が謎を呼ぶ展開があるワケじゃなく、ただ「訓練中に銃が紛失。誰が?どうやって?何の為に?」その追求に全てが向かうのだけれども、自衛隊と云う一般的に特殊な世界やルールがある中で起こる不可思議な謎。「特殊」とは言うものの、その世界は地続きである事もストーリーを追うと共に認識させられている自分が居る。視点が変わる事で明かされて行く事実(または誤認?)から、一見まるで不可能とも思える謎の解体は、一風変わった舞台で上演される本格ミステリとも思えた。2016/06/01