内容説明
CDショップに入りびたり、苗字が町や市の名前であり、受け答えが微妙にずれていて、素手で他人に触ろうとしない―そんな人物が身近に現れたら、死神かもしれません。一週間の調査ののち、対象者の死に可否の判断をくだし、翌八日目に死は実行される。クールでどこか奇妙な死神・千葉が出会う六つの人生。
著者等紹介
伊坂幸太郎[イサカコウタロウ]
昭和46(1971)年、千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で第5回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、作家デビュー。2003年『重力ピエロ』が直木賞候補となる。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞を、『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
1690
6つの作品からなる連作短篇集だが、最後には一応、円環が閉じられる構成。もっとも、続編があるようだが。内容的にはまさに越境するエンターテインメントだ。主人公に死神を配することで、通常の人間たちの行動や心理を逆照射しようとする試み。見方を変えれば、こうして諦念を持って眺めれば、あるいはこの世の中というのは案外にシンプルな構造を持っているのかも知れないとも思う。解説者は「異化」という言葉で語るが、まあ確かにそうだ。死神を主人公にしなければ、テーマは純文学そのものだろう。そして、それをエンターテインメントとして⇒2018/01/09
サム・ミイラ
1498
最後の物語の残り一頁で鳥肌が。これは凄い本当に凄い。伊坂幸太郎のなかでも異色な作品。会話の軽妙さとどこかコミカルでシュールな展開はいつも通りだか純文学の趣と娯楽性を両立させた氏の最高傑作だと思う。特に緻密な構成と抑えた描写、比喩の巧みさに脱帽。この小説ほど過ぎゆく時の重さや儚さ切なさそして愛しさを感じさせてくれる作品は他にないだろう。これこそ現代の寓話と言うべき作品。読むべし!2015/01/22
ehirano1
1434
「魔王」で千葉さんが出てきて読メの皆様ご興奮のようだったので、オオモトを読んでみました。確かに別作品で彼が登場するとこれは興奮しますね。2016/09/04
にいにい
1094
「浮力」を読んだら、皆さんのレビューに「精度」断然面白かったという意見が、大半だったので、後れ馳せながら読了。確かに、短編の方がスッキリしてるし、余韻も残って千葉さんも存分に魅力を発揮してる。他の話との繋がりもあって、いい~。老女があの人で、あの人は、デビュー出来て、良かった~。長い時間を断片的に、時代を感じさせず進める伊坂さん流石。着想、千葉さんのキャラが、抜群だから、長編も良かった。でも、軍配は、こっち。特に「死神対老女」好きだな!名言満載の一冊。2016/02/10
zero1
1082
人間は不可解なもの。死神の視線で人を描く点が斬新。1週間、対象者を調査し「可」なら死ぬ。死神の千葉は音楽が好きで間が抜けた会話をする。雪男や年貢の話など笑えるが、後半になるとやや飽きる。ストーカーに狙われた苦情処理係の意外な結末。古風なヤクザの生き方。「吹雪に死神」はクローズドサークル。片思いのメガネ男。「死神対老女」は直木賞受賞作「海の見える理髪店」(荻原浩)を思い出した。他作品へのつながりや伏線の回収も見事。本書は直木賞候補で06年本屋大賞第3位。この評価は妥当。レビューを書くため再読。続編あり。2019/03/05