内容説明
勤めていた会社を解雇され再就職もままならず、自分の保険金で妻子の生活費を捻出しようと、バイクの事故を装って自殺を図るために北海道にツーリングに出かける男(「旅の半ばで」)など、ヴィンテージ・バイクと、それらにかかわる無器用で、それでも必死に己の人生を生きる男女7人の姿を描く、連作短篇集。
著者等紹介
熊谷達也[クマガイタツヤ]
1958年、宮城県仙台市生まれ。東京電機大学理工学部数理学科卒業。中学校教員、保険代理店業を経て、97年、「ウエンカムイの爪」で第10回小説すばる新人賞を受賞して作家デビュー。2000年、「漂泊の牙」で第19回新田次郎文学賞受賞。04年、「邂逅の森」で第17回山本周五郎賞、第131回直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ミカママ
473
熊谷さんて、こういうのも書く方だったんだ。『邂逅の森』の印象が強く、この作品で新しい作風を見た思い。どうやらご本人もバイク乗りらしく、「ならでは」の描写が佳い。わたしの大好物、連作短編集なのだが、少々繋がりすぎな気も。でもまぁバイク乗りの友だちはバイク乗り、ってことなのかな。わたし自身は学生時代、ちょっといいなと思ってた人の後ろに乗せてもらったことがあるだけ。一生、リアシート(というらしい)でいいや(笑)2020/04/23
きょん
62
若かりし頃、女子3人バイクで北海道ツーリングをした時の思い出が蘇ってとても懐かしく読んだ。バイクに乗るきっかけやバイクを通じての出会いや別れを登場人物を繋げながら話も繋がっていく。冬は寒いし夏は暑い、それでも風を受けながら走る気持ちよさはバイクに魅了された人が感じられることかもしれない。2022/08/17
takaC
58
自分も元ライダーだから(ヴィンテージではなくてオフローダーだけど)いろいろ共感できた。2015/07/22
はつばあば
47
人が背負う人としての重荷を、ライダー仲間との繋がりを通して書かれている。ボートの4級免許を取った時、原チャを始めて乗った時、風に当る爽快感は凄い魅力に富むものだった。原チャでさえそうなんだから大型バイクに魅せられたが、重いのがネック。それでも歩くのが弱ってきた今、原チャ様々。熊谷さんの魅力がまた一つ増えました。帯に書かれている「走る為に生き、生きる為に走る」・・人生には息抜きが、生きにくい世なればこそ、ホッとするひとときが目先を変えてくれるはず。2015/05/12
さぁとなつ
41
バイクに乗る人にとっては魅力的な話なのだろうと思います 旧型とかいろいろバイクの種類やそれらの特徴もさりげなく書かれており、バイクの世界も深いことを知りました わたしは大昔に真っ赤な原付タクトに乗っていましたがそんなちっちゃなものからでも風を感じたものでした バイクはもっとすごく風を切るのでしょう ライダーが各編に登場し、人物が交差している話で、死や別れに縁取られており、物悲しさも感じます 重なり合ういくつもの人生がバイクの排気音でリセットされ、そしてその後静けさがより増して感じられるような熊谷作品でした2024/11/24