内容説明
落ちこぼれ高校に通う理穂、美咲、如月。十七歳の誕生日を目前に理穂は失恋。身体が弱く入院を繰り返す美咲は同情されるのが大嫌い。如月は天才野球選手の兄・睦月と何かと比較される。でもお構いなしに、それぞれの夏は輝いていた。葛藤しながら自分自身を受け入れ愛する心が眩しい、切なくて透明な青春群像小説。
著者等紹介
あさのあつこ[アサノアツコ]
1954年、岡山県生まれ。青山学院大学文学部卒業。『バッテリー』で第35回野間児童文芸賞、『バッテリー2』で第39回日本児童文学者協会賞受賞、『バッテリー1~6』で第54回小学館児童出版文化賞受賞。一般文芸や時代小説にも枠を広げ、活躍している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ゴンゾウ@新潮部
99
特に何か事件が起こるわけでもない。何かに熱中しているわけでもない。そんな地方都市の高校生達の日常生活が描かれている。友だちと喋ったりする普通の生活。なんだけど里穂や美咲や如月達がキラキラみえる。彼らの会話がとても良かった。2017/11/15
ヴェネツィア
68
地方の落ちこぼれ高校に通う女生徒、理穂の視点を通して、彼女たちの高校1年~2年の夏までの日常を描く。登場するのはほとんどが、この高校の生徒たちだが、みんなお行儀が良過ぎて、残念ながらリアリティには乏しい。2012/03/28
再び読書
58
何気ない仕草、言動に何故か心が揺れる、心理描写に長けているあさの氏の真骨頂なのかも知れない。あらすじだけでは、平凡な印象のやりとりが、浅野氏手にかかると、「夜のピクニック」ばりの青春小説になり変わる。惜しむらくは得意の野球拘りをもう少し見せてもありと感じた。しかし、ミステリーのような起伏が無い出来事の積み重ねが、名手の手にかかり瑞々しい文章に化ける。表現は悪く稚拙であるが、あさの氏の景色を紡ぎだす感じが、意外なおじんの心を撞く。2014/01/08
モモ
53
勉強が苦手な子が通う稲野原高校。理穂は彼と別れたばかり。眠ってばかりの如月は甲子園を目指す優秀な兄・睦月がいる。旧家のお嬢さま・楠道。超未熟児で生まれた美咲。学年で一番成績がいいスウちゃん。彼らの夏の日々。美咲はたまに体調をくずし入院する。それをかわいそうと同級生に泣かれ激怒する美咲。人にかわいそうと言うのは、注意するべき。何気ない日常だが、高校生の時にしか感じられない日々がなんだかまぶしい。夏にぴったりの本でした。2022/07/02
えみ
49
どこかにいる誰かの一風景。17歳の高校生の生活。何もないことが思い出になっていたあの頃の懐かしい記憶が甦ってくる。子供でもなく、大人にもなりきれていない人生のほんの一瞬、狭間。社会の在り方、学校、ルール、そういった縛りがちょっと斜めに見えて構えてしまうヤングアダルト時期。あまり成績の良くない高校に通う女子高生の理穂は、同じ学校に通う友人たちと夏を楽しむ。悪友の、病弱でありながら口の悪さピカイチの美咲。彼女との、全てを知り尽くした二人だからこそ成り立つ、滑らかで毒の仕掛けられた会話のキャッチボール…最高!2020/08/25