内容説明
万延元年(1860)、江戸の天然理心流の道場・試衛館で日々近藤勇や土方歳三らとともに剣術修行に明け暮れる十七歳の沖田総司は、幕府の浪士組に参加し上洛する。新撰組隊士となった総司は、芹沢鴨暗殺、池田屋事件と幕末の京の街を疾走する。信じるもののために燃焼し尽くした総司の生涯を描く新撰組三部作完結篇。
著者等紹介
秋山香乃[アキヤマカノ]
1968年、北九州市生まれ。作家。活水女子短大卒業。柳生新陰流居合道四段。デビュー作の『歳三 往きてまた』が新選組ファンのみならず、時代小説ファンの支持を得る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
120
切なくて胸が締め付けられるようでした。若き天才剣士として新選組で活躍した総司。幕末の京を自分の信じる道のために駆け抜ける姿は鮮烈な印象を与えます。飄々としていてつかみどころのない総司は新選組という中でこそ輝けたのだと思いました。結核に冒されなければより自分の思う正義を貫くことができたのでしょう。病のため、隊から離れ、療養していたとき、総司の心中はいかなるものだったのか。炎のように自らを燃焼させながら生きた総司。静かに息をひきとる瞬間に悲しみを感じずにはいられませんでした。2017/02/28
Die-Go
75
新撰組副長助勤・沖田総司の生涯を秋山香乃の筆で追う。女性ならではの柔らかい筆致で沖田総司を描いていて、なかなかに好印象。ただ、親友の久保裕次郎との最後の対決があっけなかったのが、少し残念。★★★★☆2017/05/13
財布にジャック
64
題名からして、総司が圧倒的主役の新撰組ものなんだと思って読んでみたら、そう言う意味では肩透かしでしたが、それでも、大好きな新撰組の軌跡を辿っていく小説は、何度読んでも胸が震えます。オリジナルキャラクターの長州藩士の久保裕次郎の登場もポイントが高かったと思います。そして毎度のことながら、山南さんの手紙には泣かされるし、総司の運命にも泣かされるし、結局またまた涙なしで新撰組を読み終えることが出来ませんでした。2012/04/29
さつき
53
とても爽やかな新撰組物。主人公の沖田総司をめぐる人々、近藤勇、土方歳三、藤堂平助、山南敬助などの心情が丁寧に描かれています。血生臭い集団のはずなのに学園物を読んでいるように錯覚しちゃうほど、みんな優しく繊細です。若くして亡くなった総司の「友人」たちとの別れの場面がそれぞれ、とても切ないです。2017/05/19
アルピニア
52
新選組三部作の最終作。剣の天才沖田総司。近藤、土方を慕い、そして彼らに心から愛された男だと思った。清流のような気質がまわりを魅了するのだろう。彼を表現するには、武士というより、剣術士という言葉が合っていると思う。特に芹沢に対する思いには、強いものに対する憧れ、畏敬がこもっていて、行動や思想とは別の次元の剣術というものの魔力を感じた。新選組を客観的に捉えた部分も心に残った。山南や谷周平との関わりは考えさせられることが多かった。彼は、戦えずに無念を抱えながら死に向かうことをあえて自分に課したのかもしれない。2018/06/07