内容説明
無銘の古刀に名匠の偽銘を切って高価な刀剣にみせかける鏨師。その並々ならぬ技術を見破る刀剣鑑定家。火花を散らす名人同士の対決に恩愛のきずながからむ厳しい世界をしっとりと描いた第41回直木賞受賞作「鏨師」のほか、「神楽師」「狂言師」「狂言宗家」など、著者が得意とする芸の世界に材を得た初期短編集。
著者等紹介
平岩弓枝[ヒライワユミエ]
昭和7(1932)年、代々木八幡神社の一人娘として生れる。30年日本女子大国文科卒業後、小説家を志し戸川幸夫に師事。ついで長谷川伸主宰の新鷹会へ入会。34年7月「鏨師」第41回直木賞を受賞。平成3年「花影の花」で第25回吉川英治文学賞受賞。平成10年、第46回菊池寛賞を受賞。平成16年、文化功労者。テレビドラマ、芝居の脚本も多い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hit4papa
51
五作品が収録された短編集。タイトル作は刀剣鑑定家と贋作に加担する鏨(たがね)師の因縁を描いた作品です。鑑定士にに見破ら打ちのめされた鏨師は、時を経てリベンジを企てます。命を削りながら仕上げた作で一矢報いた鏨師。ラストの、信念の人である鑑定士の決断が清々しいのです。神楽、長唄、狂言などを取り上げた他の作品を含め、芸道小説集であり、知らない世界を垣間見させてくれます。芸へのアツい思いが余韻として残る名品揃いです。師匠と次世代を担うと期待をかける弟子「神楽師」、疎ましい師匠と将来を嘱望される弟子「つんぼ」他。2021/07/19
優希
47
第41回直木賞受賞作を含む著者初期の短編集。日本の伝統から材をとった作品の数々ですが、その方面に明るくなくても楽しめました。元々日本の伝統芸能に興味がないわけではないので、勉強にもなりました。これを機に、より興味を持ちました。2022/07/05
空猫
35
【第41回直木賞】刀鍛冶の『鏨(たがね)師』 。『神楽師』。長唄師の『つんぼ』。『狂言師』『狂言宗家』という5つの短編集。言わずと知れた日本の伝統芸である。時代の流れに取り残されつつもあり家の、後取りの、事情は複雑だ。濃厚な人間ドラマだがそれぞれの舞台に馴染みがなく、古い言葉も多く苦戦してしまった。2023/02/23
ここぽぽ
20
初めて知った世界。伝統芸能の厳しさと,濃厚な人間ドラマ。時代が古く、なじみのない言葉もでてくるが、人々の技や道に対する矜持が素晴らしい。日本の繊細さ、お家を継ぐ堅苦しさ、古き良き日本があった。2023/12/28
Willie the Wildcat
20
相伝の技。妥協を許さない姿勢と、古典芸能故の人間関係。後者は時に壮絶。当人達以上に周囲の者、特に家族の心境に切ないものを感じる。付け加えて終わり方がとても情緒的。印象深いのは『神楽師』。久太郎と雪絵。単に白無垢姿に感動しているのではない。様々な経緯と想いへの共感から、じ~んとくる。「窓ガラスを閉めた。」は心に残るなぁ・・・。解説から著者の伝統芸能への造詣の深さを理解。さすがです。蛇足ですが、読書中に調べると時間はかかりますが、古典芸能の知識が嫌でも増えますね。(笑)2012/09/04