出版社内容情報
悪名高き殺人鬼を父に持つ教え子のために、過去の事件を調査しはじめた教師がたどりついたのは、あまりに痛ましい結末だった。
内容説明
教え子エディが悪名高き殺人犯の息子だと知ったとき、悲劇の種はまかれたのだ。若き高校教師だった私はエディとともに、問題の殺人を調査しはじめた。それが痛ましい悲劇をもたらすとは夢にも思わずに。名匠が送り出した犯罪文学の新たなる傑作。あまりに悲しく、読む者の心を震わせる。巻末にクックへのインタビューを収録。
著者等紹介
クック,トマス・H.[クック,トマスH.][Cook,Thomas H.]
1947年、アラバマ州生まれ。1980年『鹿の死んだ夜』で作家デビュー、1996年の『緋色の記憶』でアメリカ探偵作家クラブ最優秀長篇賞を受賞。ほの暗い詩情と繊細な語り口で人間の罪の物語を描きつづけ、日本でも高い人気を誇る
村松潔[ムラマツキヨシ]
1946年、東京都生まれ。国際基督教大学卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
127
本を読み終わった後、その余韻に浸らせてくれる作品があるが、まさに本作がこれにあたる。トマス・クックらしい哀切感がいつものフラッシュバックのような記憶とともに漂ってくる。事件を追うというよりも、人間を描くミステリは、とかく嫌う人も多いが、私はクックのモザイク模様がはがれていくように過ぎ去った過去の真実が明らかになっていくという世界が好きである。人の罪の痛みと哀しみを綴っていく作品をこれからも出して欲しいと 思う。2011/04/19
yumiko
55
何が起きたのか分からないまま不穏な世界に引きずり込まれ、語り手が辿る過去を共に追体験しながら真相に近づく…これはもはやクックスタイルと言ってもいいと思う。強い既視感は今作もそれを踏襲したからだろうけれど、一つの旋律から幾つもの変奏曲を作り上げる力量には唸らざるを得ない。背景の描き方もとても巧み。南北戦争後華やかなりし時代を懐かしみながら朽ち果てていく南部の姿が、物語とシンクロするかのように悲劇的に描かれていた。ラストの毎日郵便配達を待つ老人という境遇にあった深い意味…これだからクックは止められないのだ。2017/02/19
紅はこべ
45
南部の地方都市の名家の生まれのジャックは先祖代々の屋敷で人生の終焉を感じつつ、一人ひっそり暮らしている。彼の心を占めるのは、50年前、若き高校教師として、仕事に恋に全力で向かっていた時に起きた償いようのない悲劇。なすべきことをなさず、自らの恵まれた境遇に安住して、無意識のうちに恵まれない人々を見下し、身の程を弁えぬ夢を見て、他者に自分の夢を託す、それら全て相まって、悲劇が生まれ、ジャックに孤独な老後という罰が下された。ミスディレクションや伏線がよく利いた驚きの結末。ミステリとして満足すること請け合い。2010/11/27
キムチ
44
読み始め、流れがプツンプツンで乗るのに時間を要したが、あとは濁流の如く一気読み。やはりこの作者物は絶品。といっても精神的「沼地」・・かなりの嫌ミス。ただでさえ鼻に付く「教師」ラベル、それが全開で走る。そしてちゃちな父親のネタ本。このあほ息子、ファザコンもいいところ・・いい歳をして。ラスト配達夫の名前がわかり、まさにガーン!こうなりゃ、記憶3部作は読まないと。文庫本巻末でクックへのインタビューが掲載されている。日頃私が感じている疑問のある意味の答えがあった2015/09/02
GaGa
37
アメリカの片田舎を舞台としたサスペンス。というか悲劇。「悪」についての講義。父の犯した罪と向き合う少年。また向き合わせる主人公。残酷な現実と向き合うことで生まれた悲劇のようにとらえがちだが、どうしても同じような形で悲劇は生まれていたのであろう、そう考えるとより切ない。この作者は初読。かなり翻訳されているので、遡ってぼちぼち読んでいこう。2011/07/07
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