内容説明
刑事としての責務か、人としての矜持か。東欧の国で捜査官を務める私を、その問いが苦しめる。元美術館長の変死、画家の惨殺事件、政治委員夫人の失踪、終戦直後の未解決事件…山積する事件に影を落とす、国家の暗部。破滅を覚悟し、私はその闇へ切り込むことを決意した。熱く、骨太に、刑事たちの誇り高き戦いを描く警察小説。
著者等紹介
スタインハウアー,オレン[スタインハウアー,オレン][Steinhauer,Olen]
アメリカ、ヴァージニア州に育つ。チェコ共和国など東欧諸国に在住、現在はハンガリーに住む。2003年、「嘆きの橋」で作家デビュー
村上博基[ムラカミヒロキ]
1936(昭和11)年生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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對馬 正晃
6
何の関連もなさそうな事件が次第に収斂していくのは、なかなか気持ちがよいものですね☆ただ、その過程で泥沼にはまり込んでいく主人公を見続けるのは、しんどかったです・・・。社会主義の深淵を覗き込んだ感じがしました。この続編が未訳なのはちょっと残念。2024/08/12
seijyun
3
読みだしたら止まらなくなった。捜査チームの個性的な面々、主人公の抱える個人的な問題、組織への反発等は昨今のミステリーの常套だと思うが、その組織が強大かつ硬質な国家体制だとどうなるのか。冷戦体制が深更しつつある東欧国家の雰囲気がよく伝わる作品。映画「善き人のためのソナタ」のシーンが何度も頭をよぎった。2016/10/24
ゑこびす
2
読み始めて暫くは「ハズレ引いたかも?」と心配したが、 トンデモナイ!、 人がシッカリト描かれた、 読み応えのある面白い作品だった。 東西冷戦下ハンガリー動乱頃の、 東欧小国の民警捜査官である主人公が、 共産党独裁政権下、公安、KGB・・・、 怖い闇の中に手を突っ込まなければならない捜査を行う。 複数の事件が 1 本に繋がるも、 恐ろしい結末に息苦しくなる。 2010/10/15
tegi
1
傑作。前作に続く生き生きとした脇役たち、序盤の開放的な雰囲気が楽しいがゆえに、終盤に淡々と語られる地獄が際立つ。本作ではあくまで日のあたる側に立つエミールのキャラクターを理解しているといないとでは味わいが違うので、ぜひシリーズを通して読んでほしい。/ストレスフルな環境で性と暴力にのめりこんでいく主人公は、しかしどこか機械的にその陰惨な道を歩くようにも見える。他の警察小説(たとえばエルロイ)とは、似て非なる暴力性へのアプローチだと思った。2012/05/15
co_taro
1
1956年東欧。スランプで書けぬ作家フェレンクは食うために民警を務める。生活は苦しく家族の絆は崩壊状態。新作も筆は進まずどんずまり、民警の捜査でも信じる正義と共産主義下での極限のギャップにもがきやがて壊れてゆく。主人公が全てを賭けて書く”物語”とは、果たしてこれだけ犠牲が必要だったのか?ラストの余韻が苦い感情だけでなく成し遂げたことでささやかな誇りが貫かれたと信じたい。シンとして淡々とした幕引き、それが虚しい人生として歴史ととも片付けられてしまうににせよ。2009/01/31