内容説明
惨殺された作曲家。次々に変死を遂げる関係者。黒幕は共産主義政府高官か?事件の深層に触れた若き刑事エミールに捜査中止命令が下る。だが彼は美しき未亡人の命を守るべく、そして徴兵忌避者の汚名を返上すべく捜査を続ける。決死の西ベルリン潜入行が暴いた醜悪な事実とは?話題の大型新人が放つMWA新人賞候補作。
著者等紹介
スタインハウアー,オレン[スタインハウアー,オレン][Steinhauer,Olen]
アメリカ、ヴァージニア州に育つ。チェコ共和国など東欧諸国に在住、現在はハンガリーに住む。多数の職業を経験したのち、2003年に初の長篇小説「嘆きの橋」を上梓、同年度のアメリカ探偵作家クラブ(MWA)最優秀新人賞候補となる
村上博基[ムラカミヒロキ]
1936(昭和11)年生まれ。東京外国語大学ドイツ語学科卒業。英米文学翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NICK6
6
スターリニズム敷く仮想国家。国家警察着任日の洗礼が陰湿な虐め。対して、怒りというよりは、いくぶんノアールな男。心象は昏いまま沈殿するのみ。被害者としてのそれではない。しかし陰湿な攻撃が続くと、しぶとい言動が見え始め、ぶっとい硬質な耐性が浮き彫りに。硬派な男はどのようにして誕生したか?その疑問がエネルギーとなり読書が加速。徐々にわかってくる忌まわしい過去。国家体制の闇。時代イデオロギーの罪と罰。加速するストーリーの波にのってエンディングへ!遭遇する女への恋情と思惟。深い官能の調べ他、全編素晴らしい。 2023/07/21
Cinejazz
6
ソ連とナチスに蹂躙された冷戦下東欧某国での、民警殺人課捜査官の物語である。時代背景と舞台設定の特異性が醸し出す東欧文学の香りにあふれ、貧困と暴力が吹き荒ぶ社会に生きる人々の哀切さがにじみ出てくるような作品。書名の『嘆きの橋』(THE BRIDGE OF SIGHS)の謂われは、ヴェネツィアの<ためいき橋>が会話に登場する。“ その橋を渡りだすと、もうどんな希望もないことを知るんだ。これより囚人の一生を送ることを知るんだ、鉄格子のなかで ” “ ヴェネツィアには行きたくないな ” 2019/11/06
對馬 正晃
5
第二次世界大戦後の社会主義国家が舞台ということで、馴染みのない背景に戸惑いましたが、殺人事件を追う経過は楽しめました。終始陰鬱な雰囲気が漂っているので、読後感もすっきりとはいきませんね(苦笑)シリーズ5部作すべては訳出されていないようですが、次作も読んでみたいです☆2015/02/10
Satoshi
4
第二次世界大戦終戦後の東欧の架空の国が舞台となっている。作曲家の殺人事件を捜査する警察ミステリーの様相であるが、終始、陰鬱な空気が漂い、過去の深層ももちろんナチスドイツがらみ。ナチスドイツからの侵略の後に、スターリンの恐怖政治を体験した東欧の複雑な立ち位置が、戦争に参加しなかった主人公となんか重なる。著者は主人公をただただ傍観者としてこの時代を見つめているように描写しており、ヒーローでも何でもないこの主人公には深く共感させられる。2016/02/01
かやは
2
これは傑作ですよ、同志! ベルリン封鎖という東西冷戦が本格的に始まった時期という時代背景に、架空の社会主義国家の殺人課が舞台という異色作。当然、ソ連の秘密警察も出てくるし、職場では"党"からのお目付役の公安委員が同じ部屋で仕事をしてるのな(笑)。このいかにも東側という設定が(しかも主人公は殺人課の新米刑事=体制側の人間)こけおどしじゃなくてきちんと物語として読ませるところに作者の上手さがありますね。2013/10/21