感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
312
初老の夫婦の日常を日記風に、また随想風に描いてゆくスタイルの小説。作家本人そのままと思われる人物の一人称体で語られる。また、タイトルの「せきれい」は、妻が習っているピアノ曲でブルグミュラーの練習曲の名前で、鳥ではない。もっとも、作中には庭にやってくるメジロや四十雀、つぐみなどが点描される。それにしても、よく食べる人たちだ。つまり、この夫婦二人の日常はきわめて平和にして、平穏なのだ。他の方々の感想は概ね好意的なのだが、私にはまっとうすぎて、その良さがよくわからない。いずれはこの境地に達するのであろうか。 2017/11/08
pirokichi
22
とてもよかった。本書にはあの「山の上の家」の老夫婦の日常が淡々と日記風に綴られている。庭の花を愛で、鳥たちの訪れを喜ぶ。子や孫が集い正月や誕生日を祝う。季節の行事を大切にする。戴きものがあったり、ご馳走を作れば近所や子の家族にお裾分けする。夜には夫がハモニカを吹き、妻が歌う。何が起きるでもない夫婦の穏やかな日常。そこには揺るぎない芯のようなものがある。文中にネガティブな言葉はない。私自身の生活にも自分が決意すれば、ネガティブな言葉でなく「よろこぶ」「うれしい」「ありがたい」がそこここにあるのかもしれない。2021/04/04
まど
19
夫婦でお茶とりんごを食べているなにげない描写から、幸せが立ち上ってくる稀有な私小説。老夫婦の日常の繰り返しがこんなにも豊かなものなのかと気づかせてもらった。同じようなことが繰り返されているだけでストーリーはないようなものだけど、飽きないし楽しい。読んでいるうちに癒されて元気が出てくる。こういうの読みたかった。生きている間に出会えてよかった。晩年シリーズ、少しずつ読んでいきたいです。2011/09/06
田中佳代子
17
🐦せきれいは、庄野潤三さんとの出逢いの本。連綿とつづられる穏やかな日常。<季節のしるし>をいち早く見つけては喜び合う夫婦。著者はゆっくりとハーモニカを吹き、奥さまはのんびり🎹ピアノのレッスン。そんなご夫婦のお子さんやお孫さんも、近所の方たちもほどよい距離をとりながらとても親切。庄野さんの作品を見つけては、心いやされていました。ささやかな♡恋文をしたためてお届けできなかったのが唯一の心残り。庄野さんの本の根底に流れているのは 🌿感謝🌿私もそんな家族を育みたいと想います。〜庄野潤三さんの命日に寄せて〜2010/09/21
7kichi
10
ホントに何も起こらない。「静」の達人。喜怒哀楽の「怒」がない。「怒」がない代わりにドレミがある(笑)2010/01/29