内容説明
元刑事で、今はしがない私立探偵である茜沢圭は、末期癌に冒された老人から、35年前に生き別れになった息子を捜し出すよう依頼される。茜沢は息子の消息を辿る中で、自分の家族を奪った轢き逃げ事件との関連を見出す…。「家族の絆」とは何か、を問う第18回サントリーミステリー大賞&読者賞ダブル受賞作品。
著者等紹介
笹本稜平[ササモトリョウヘイ]
1951年、千葉県生まれ。立教大学社会学部卒。出版社勤務の後、フリーライターとして独立し、同時に創作活動に入る。2001年には本作品『時の渚』で第18回サントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞する。また、2004年には『太平洋の薔薇』(中央公論新社)で第6回大藪春彦賞を受賞。壮大なスケールで冒険、謀略小説を構築できる作家として期待されている
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
198
笹本さん2冊目。元刑事の探偵・茜沢が末期癌の老人に人探しを依頼され、凶悪事件に巻き込まれるハードボイルド…と思いきや中盤からはアクションも増えて、謎が謎を呼ぶ展開も目まぐるしくて楽しい。茜沢自身の辛い過去、人探しの難解さ、途中途中で挟まれるユーモア、脇役たちとの交流などテンコ盛りでサービスしてくれるのは嬉しかったが、最後に判明する真実は偶然が多過ぎるサービス過剰で「いかがなものか?」と疑問。切ないヒューマンドラマも盛り込んで狙いは悪くないのだが、消化不良ぎみで整理が巧くついているとは思えなかったのが残念。2020/06/13
じいじ
126
初読み作家。骨太な読み応えのいいミステリーで面白かった。また、追いかけたい作家が一人増えた。出端からグイグイ引きつけるパワーに圧倒される。主人公は、元捜査一課の刑事、今は一匹狼の探偵。余命半年の老人からの人探しと、自身の妻と一人息子を轢き逃げした犯人捜しを二本の柱として進行する。二本の糸が一つに繋がる。出生のヒミツが根底に流れるキーワード。残忍な事件に隠れて主人公を取り囲む人たちの温かさにホッとします。終わりの50頁は、緊迫感と感動に浸るエンターテイメントです。一晩経て、読後の余韻がまだ残っています。2018/06/02
chiru
124
元刑事の私立探偵ハードボイルド小説。探偵が死期の迫る極道から受けた依頼は息子探し。35年前、逮捕を前に赤ちゃんを育てられないと悟った極道は、見ず知らずの女に赤ちゃんを託してしまう。“息子”の余白を埋めるパーツを探すうちに、探偵は予想外の真相に辿りついてしまう。犯人の人生とは? 探偵につながる意外な接点とは? 血のつながりを超えた揺るぎない愛情や、どす黒い感情を爆弾のように抱える探偵のモノローグがよかっただけに、割と早めに分かる真相と偶然に頼る打率の高さが少し残念💦 ★2.52020/07/12
相田うえお
105
★★★☆☆19068この作家さんの『春を背負って』が好印象だったので、18回サントリーミステリー大賞と読者賞でダブル受賞した このデビュー作『時の渚』を(山系なのか警察系なのかも気にせず)入手!余命半年の老いた男性が「生まれてすぐに訳ありで手放した自分の子供を探して欲しい」と探偵(元刑事)へ依頼するという 書き出し部で早くも心鷲掴み!(うん、山系ではなかったね)起承転結の『起』がキャッチーな内容で先が気になります。後半の犯人逮捕シーンはもうハラハラ!ただ、結末は都合のいい偶然があまりにも多過ぎてびっくり!2019/07/26
ふじさん
101
探偵の茜沢は、末期癌に冒された老人から生き別れになった息子を捜し出す依頼を受ける。息子の消息を辿る中で、自分の家族の命を奪った轢き逃げ事件との関連を知ることになる。二つの流れはやがて一つに繋がっていくが、二重、三重のどんてん返しが準備されていて容易に真相がつかめない。中盤以降の展開は、本格ミステリーとして遜色がなく、構成上の上手さ、登場人物の描写の巧みさはさすが。ミステリーでありながら、家族とは何かを問うてやまない。最近読んだ本では、ベスト。亡き作家の作品は何冊か読んでいるが、質の高い力作だ思う。 2022/04/06