内容説明
ヒナゴン探しが難航する比奈町に市町村合併の波が押し寄せた。地方の将来を見据えた備北市の片山市長と、義理と人情で世間をわたる比奈町長イッちゃんはいわば水と油。合併問題が迫ってくるうちに、予想外の事態が巻き起こる。ヒナゴンは実在するか?またUターン組の心にきざす想いとは。感動が胸にひろがる“ふるさと”の物語。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
昭和38(1963)年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て、フリーライターに。91年『ビフォア・ラン』で作家デビュー。99年『ナイフ』で第14回坪田譲治文学賞、『エイジ』で第12回山本周五郎賞を受賞。2001年『ビタミンF』で第124回直木賞受賞。ルポルタージュ、時評、評論など小説以外のジャンルでの執筆活動も高い評価を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sayan
32
義理人情ドタバタ劇は終盤に向けてエッジの効いた各登場人物のまだ見ぬヒナゴンを語る各々の物語が印象的。地域おこしや市町村の生き残りで、最近面白いなと思った「和僑(楡周平)」は、迎える後期高齢者社会を市場としてみた「ビジネス」アイディアでの生き残りを描いたストーリーである意味現実的だ。本書は、途中の展開やキャラ設定からぶっ飛んだ結末を思えると思いきや、読後感はノスタルジック、でも現実的で非常に好感を持った。やっぱり重松清作品は個人的に好きである。ところで小松左京もヒバゴンで短編を書いている。次回読んでみたい。2018/05/27
ともとも
29
比奈町に現れた類人猿ヒナゴン。 ヒナゴンの存在をめぐって、小さな田舎の過疎化が始まる町の生き残りをかけて そして夢や希望に向かって、力いっぱいに不器用に大人たちが、奔走する。 熱く、そして冒険心をくすぐりながらも、ユーモアも忘れない。 色々と楽しみながらも、考えさせられつつ、大人たちが感動の物語を紡いでいく。 なんだか、素敵で、勇気をもらえる物語で良かったです。 2016/09/29
リキヨシオ
28
ヒナゴン…広島県北部の比奈町で目撃された未確認生物。ヒナゴンで町興しをしようとする比奈町長のイッチャン…町役場に類人猿課を作ったが…それ以前にこの町の過疎化は深刻で大都市による合併が推進されている…そんな状況で、東京から故郷に帰ってきて類人猿課で働く事になった主人公ノブの視点でヒナゴン探しに過疎に苦しむ町役場に個性豊かな住人達や小さな町を巻き込む町長選が描かれる。主人公ノブやヒナゴン以上にインパクトが強いのは町長のイッチャン!今は珍しいけど1人くらいはこんな無茶苦茶で不器用で熱い大人がいてもいいと思った。2015/02/14
シェルティ
27
実は上巻はあまり感情移入できなくて、「小山の大将」の話佳代と思ってた。下巻になるとみんなの町を愛する思いが伝わってきた。ヒナゴンが主人公ではなくヒナゴンを通したみんなの町に対する愛、ベクトルは違ってもみんな町を愛している。イッちゃんも最後は我を通すのでなく、町を愛する、町の未来を優先する。こういうオラオラ系の人はキライだが、愛のある人はいいね。ヒナゴンも幻なのか、実在するのかだがいい出現の仕方出し去り方もせつなくしみる。故郷は大事にしなきゃ、どんな田舎でも胸張ろう。2013/01/22
遅筆堂
25
いいぞ。福島県に単身赴任中なので、ふるさとのことが普通以上に愛しい。やっぱり田舎であっても、ふるさとはいいのだよ。平成の市町村合併がかなり本質をついている。新市長は、ちょっと行き過ぎだと思うが、物語といしては良い落としどころ。重松清とは同じ年齢です。過ごした時代も同じ、感性も同じ、ほんと共感します。とても良質な小説です。2013/07/05