内容説明
「昔の親は、家族の幸せを思うとき、何故か自分自身は勘定に入ってなかったんだよねえ…」。女手ひとつで娘を育てた母は言う。そんな母の苦労を知りつつ反発する娘が、かつて家族で行った遊園地で若かりし日の両親に出会う。大切なひとを思い、懸命に生きる人びとのありふれた風景。「親子」「夫婦」のせつない日常を描いた傑作短篇集。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年、岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経てフリーライターに。91年に「ビフォア・ラン」で作家デビュー。99年「ナイフ」で第14回坪田譲治文学賞、「エイジ」で第12回山本周五郎賞受賞。2001年「ビタミンF」で第124回直木賞受賞。ルポルタージュ、時評、評論など小説以外のジャンルでの執筆活動も高い評価を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Smileえっちゃん
78
重松さんの、富士見線という私鉄沿線を舞台にした、9編からなる短編集。中でも「送り火」「もういくつ寝ると」が良かったかな…「家族が喜ぶ姿を見て自分が喜べる。皆が楽しそうにしていると嬉しくなる」親ってそういうものなんですね。お墓のお話も考えさせられました。重松さんは好きな作家さんで、短編集は短くても重みを感じます。2019/02/24
Take@磨穿鉄靴
74
重松氏の短編集。最後の「もういくつ寝ると」が非常に興味深かった。お墓のお話。自分も今、長男として別れた両親それぞれがどこに眠りたいのか確認作業中。母親の方意志は確認が取れている。父の方はまだ。で自分はどうだろうか、どうしたいか、ずっと自問自答していたけど答えのきっかけを貰えた気がする。目を背けるのではなく前向きに死後の事を考えたい。その上で残りの命を悔いなく燃やしたいと思う。しっかり生きよう。★★★★☆2018/09/20
優希
74
架空の富士見線という私鉄沿線を舞台にした物語。親子や家族の世界がほろ苦く描かれています。それぞれの短編に愛があり、切ない日常を切り取っているのがいいですね。昔話のような話だったり、どうにもならないような物語だったり、死との向き合い方だったりとほのぼのしたりしんどかったりしましたが、どのような話を書いてもひとすじの希望があるのが良かったです。しんみりと胸に染み入って来るような感じが好きです。2014/12/04
ちゃとら
66
架空の富士見線沿線の短編集。どれも、ちょっと幽霊チックな、うら寂しくて優しい不思議なお話。 「家路」は家出中で一人を満喫するパパにだけ見える駅の地縛霊。「お帰りなさい」を聞きたいから毎日ラッシュの中、家に帰るんだ。帰りたい!と言う地縛霊。ラストのお墓の話も、長くは生きられない娘の為に富士山の見える墓を買う若い夫婦が登場し、グッとくる。良い本でした。2019/05/24
かんらんしゃ🎡
58
★重松氏の語りは暖かい。でも癒されない。むしろ突き刺さるほどに痛い。それは彼らへの同情からくるだけじゃない。いつか我が身に降りかかる時の覚悟かもしれないし、その不安におののいてるのかもしれない。苦しいほどだ。★それでも乗り越えなければならない。富士見は不死身でもあるけど、push me(背中を押してくれ、再び歩き出すために…)でもある。2016/08/31