内容説明
ダムの底に沈んだ故郷を出て二十年、旧友の死が三十代も半ばを過ぎた同級生たちを再会させた。帰りたい、あの場所に―。家庭に仕事に難題を抱え、人生の重みに喘ぐ者たちを、励ましに満ちた視線で描く表題作始め三編を収録。現代の家族、教育をテーマに次々と話題作を発信し続ける著者の記念碑的作品集。
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒。出版社勤務を経て、91年『ビフォア・ラン』でデビュー。97年に発表した『ナイフ』は現代の家族が抱える問題を鮮やかに描き出し、99年に坪田譲治文学賞を受賞する。その後も現代社会をテーマに次々と意欲作を発表、99年『エイジ』で山本周五郎賞、01年『ビタミンF』で直木賞を受賞する
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
遥かなる想い
104
表題作は 中学を卒業して 22年 再会した4人の物語である。何もできずに ただ見てるだけの「カカシ」と言われている37歳の先生が、 埋没した村を友と訪ねる… やや感傷的だが、誰にでもある過去の思い出を 明日へと繋げていく…著者らしい真摯に生きようとする者たちの物語だった。2023/11/18
にいにい
103
「過去、現在、未来」がキーワードとなる三篇の短編集。重松さん十八番の教師、生徒もキーかな?「ライオン先生」最後の教室シーンにジィ~ン。『人生は、思うほどにはうまくいかない。いまならそれを教えられる。教えたあとで、「でもな」とつづけたい。その先の言葉を、これから、探していきたい』様々な葛藤を抱えながらも、とにかく前に。「未来」は、自殺に捉えられた人々に目を通して欲しい。居なくなった先を頭の片隅に。「カカシの夏休み」は、学生時代の友達がどんな拠り所となるか。三篇とも、寂しい現実に温かい。心に響く重松節な一冊。2016/01/19
あきら
94
最近、なかなか本を読む時間がなくて、久々に読んだ本。 気付いてるけど、言っちゃいけないと思ってること。そんなことを代弁してくれてるような、三作品でした。 重松さんの物語は主人公が自分と同じような歳の場合が多くて、時代は違うんだけど、抱えてるものに大きく共感できます。根本の価値観とか考え方は、遺伝子の中に根付いてるのかなあとしみじみ感じます。2022/10/16
Atsushi Saito
85
同級生の死をキッカケに、ダムに沈み行く事も見る事も出来なくなった過去へ赴く「カカシの夏休み」。 タテガミで覆い隠した現在を晒す「ライオン先生」。死んだ同級生の16年と228日、19年と212日目の未来の「未来」。三つの短編集。 死を前提にした生を持ち、時は等しく過去は遠くなり現在はすぐこぼれ落ち未来は見えない。それでも僕らは考え思い悩んで生きて死ぬ。著者の作風と時の流れがリンクしててとても好きです。2016/03/26
のんき
83
リストラとかイジメの問題。リストラされた父親が、子どもに暴力を振るったり、逆にリストラされた父親を子どもがバカにしたり、そんなふうになってしまう親子も多いんだろうな。イジメも深刻な問題。うちの家族でも、リストラとか、イジメの問題、ないとは言えないし、あったら家族としてどう接したらいいのか、なかなか難しいです。この本の中の親子のようになってしまうかも。でも、本作品での希望が持てる終わり方は、さすが重松清さんらしいな2018/06/05