内容説明
イタリア雑貨の買い付けをしながら一人暮らしをしていた私の家に、七歳下の従妹チエちゃんがやって来た。率直で嘘のないチエちゃんとの少し変わった同居生活は、ずっと続くかに思われたが…。家族、仕事、恋、お金、欲望。現代を生きる人々にとって大切なテーマがちりばめられた、人生のほんとうの輝きを知るための静謐な物語。
著者等紹介
よしもとばなな[ヨシモトバナナ]
1964年、東京生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。87年、「キッチン」で海燕新人文学賞、88年、単行本『キッチン』所収の「ムーンライト・シャドウ」で泉鏡花文学賞、89年、『TUGUMI』で山本周五郎賞を受賞。アメリカ、ヨーロッパなど海外での評価も高い(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
161
イタリア雑貨のバイヤーである私と従姉妹チエちゃんの奇妙なふたり暮らし。イライラすることもあるけれど、一緒の暮らしはしみじみといい。 ばななさんの作品はいつもそうなのだけれど、主人公が泰然としていて、たとえ劇的な出来事が起こったとしてもそれはあくまで湖面のゆらぎで、何も問題はないんだなぁ、と安心して読むことができる。外的世界で目まぐるしく物事が動いて、日々それに翻弄されがちだからこそ、こういう視点に立ち返ることのできる本はしみじみ大事にしたい。イタリアに行きたくなって、きちんとした生活をしたくなる本です。2019/01/03
優希
62
ちょっと突飛な感じもしますが、日常を強く切り取った作品だと思います。従姉妹のチエちゃんとの生活が何故か愛おしく感じました。率直で嘘のないチエちゃんと少し変わった同居生活をしているけれど、この人と生活しているといいなって思えるのが胸を打ちます。好きな人ができたら邪魔になりそうな匂いはするんですけど、そういうこともなく、チエちゃんとの生活はずっと続くんだろうなと思わされるのが素敵ですよね。現代を生きるうえで考えることが沢山散りばめられていてキラキラしていました。2014/09/10
だまだまこ
41
ばななさんの小説は結末どうこうより、物語が進んでいる間の温度感というか、世の常識に縛られない価値観に触れることが出来るのが心地よい。中年の独身女性2人が同居を始める不思議な話。周りからは歪んでいるように見えるが、本人たちにとっては自然な成り行きだった。「同じようなものがあるとしたら、それは自分の内面のほうであって、世界のほうではないの。」人も、ものも勝手に分類して、知ったふりしてはいけないし、世界にはいつだって同じものは存在しない、ということの意味を改めて考えた。2018/03/04
風眠
37
突拍子もないってほどじゃないけれど、ほんのちょっと非日常的な。よしもとばなならしい深みと、透明な雰囲気のある物語。風の行方を読み、植物に寄り添い、体の声に耳を澄ます。そうして少しずつ、天涯孤独になった喪失から立ち直っていくチエちゃんと、自由すぎるチエちゃんに感情が振り回されながらも、大切な「家族」としてチエちゃんを尊重していくカオリさん。決して穏やかなだけではない、けれど、一日一日を大切に生きていくふたりの「ゆとり」が素敵だ。何となくふたりの老後の暮らしが想像できて、小さくフフッと口元がゆるむ読後だった。2013/06/02
ほほほ
30
42歳の私と36歳のチエちゃんの同居生活。はたから見ると“くたびれたおばさん同士が一緒に暮らしている”だけ、なんて主人公は遊び心で言ってみたりするけど、実状はそんなじゃない。毎日の生活を丁寧にし、些細なことでも得意なことは深めていって自分のものにし、本当に気の合う人と愛をもって関わり合い、自分の人生を誠実に覚悟をもってちゃんと生きている。満足度がすごく高そう。”私は燃えるような謎でできている”なんて、かっこいい。バッグの中に入っているだけで嬉しくなるよしもとばななさんの本、久しぶりに堪能しました。2015/06/13