内容説明
乃木希典―日露戦争で苦闘したこの第三軍司令官、陸軍大将は、輝ける英雄として称えられた。戦後は伯爵となり、学習院院長、軍事参議官、宮内省御用掛など、数多くの栄誉を一身にうけた彼が、明治帝の崩御に殉じて、妻とともに自らの命を断ったのはなぜか?“軍神”の内面に迫り、人間像を浮き彫りにした問題作。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
大正12(1923)年大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。51年日本芸術院恩賜賞受賞。56年日本芸術院会員。その他、数多くの賞を受賞。平成3年文化功労者。平成5年文化勲章受章。平成8(1996)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
270
司馬遼太郎が乃木希典を描いた本である。 乃木ほど毀誉褒貶が激しい人は 描きにくい のではないかとも思うが、 著者の史観は遠慮がないのが 気持ち良い。近代日本における古典的忠臣 乃木希典がいかにして形作られていったのか ..自刃に至るまでの乃木希典の 精神の過程とともに 妻静子の心の持ち様が 印象的な 物語だった。 2017/03/01
yoshida
204
日露戦争の旅順要塞攻略で有名な乃木希典。彼の軍事的な能力は司馬史観もあり、意見が分かれる。「坂の上の雲」でもあるように児玉源太郎と乃木希典が、若いころからの鮮やかな対比で描かれる。日露戦争の辛勝後に燃え尽き亡くなる児玉。明治天皇の大喪の日に、夫人の静子と殉死する乃木。子供二人も日露戦争で亡くなっており乃木家は絶える。乃木の頑ななまでの軍人としての美意識と、明治天皇への忠節を感じた。まさに劇的な生涯ではある。これが後の日本軍の精神主義に影響を与えたのではないかと思わせる作品。とは言え小説なので楽しく読了。2017/04/09
ナイスネイチャ
129
乃木希典の事が著者は嫌いな事が分かる。無能とまでの酷評に仕立て上げ、なぜ殉死に至ったのかを綴ってました。これだけ嫌いでよく作品にしようと思ったのが疑問。2020/06/30
Die-Go
99
明治帝に殉じた陸軍大将・乃木希典の半生を描く。正直ここまで読後感の悪い司馬遼太郎は初めてだ。なぜだろう?きっと、死をもって殉じると言うことに違和感を感じるからだろう。乃木大将の精神性を極めて美しく感じてしまう日本人の特性にも。★★☆☆☆2017/07/05
優希
92
乃木希典に関する知識が殆どなかったため、その生き方を知ることができ、興味深かったです。英雄であり、数多くの栄誉を受けた乃木が命を絶つ決断をしたのは衝撃でしたが、己を貫く生き方があったからなのでしょう。軍神としての1人の生涯を見たようでした。2018/05/17